浦切三語

オカルトの浦切三語のレビュー・感想・評価

オカルト(2008年製作の映画)
3.7
ポイント・オブ・ビューで進行していくホラー映画。ブレアウィッチとかRECとかと比べると流石に映像や合成面では見劣り部分があるものの、それでもそれなりに楽しめたし最後は妙な感動に包まれるという不思議なJホラー映画ですw

「オカルト」と言うタイトルなのでそういう要素てんこ盛りの映画なのかと思いきや、あくまでオカルト要素は映画のバックボーンとしてあるのみで、メインとなるのは映画序盤で語られる無差別殺人事件の生き残りとしてインタビューを受ける「江野」という名のオッサン絡み。この「江野くん」という名のうだつの上がらない派遣労働者のオッサンの奇行を楽しめるかどうかが、この映画のキモになります。

この「江野くん」なる人物、最初は普通の人に見えて、しかし密着取材の中で次第に見えてくるずうずうしさやデリカシーのなさ(もらいタバコ何回やるねんw)や、仕事のミスを指摘されて逆ギレしてしまう情けなさや、自分を差し置いて「世の中頭のおかしな奴が多すぎるわ」と平気で発言できてしまう「俺は悪くない、環境が悪い」を地で行くような、もうリアルにいそうなクソクソ駄目人間っぷりを笑って鑑賞できるかどうかでしょうねー。こういうタイプの人間にガチで苛立ってしょうがない人にはおススメできませんが、そうでない人は楽しめると思います。そういう意味では過激右翼思想者・奥崎謙三を主演に据えて、そのハチャメチャな奇人変人っぷりで場を持たせているドキュメンタリ映画「ゆきゆきて、神軍」に似ているのかもしれません。

終盤、やっていることはもうただの自意識過剰な選民思想の過ぎる孤独な中年オヤジの大暴走でしかないのですが、妙にジーンとくるというかw こういう映画で感動しちゃっていいのかな?と疑念に思いつつ、なんかやっぱり観てると「江野くん」がだんだんと憎めないオッサンとして映ってくるので、そういう風に見せてしまうところに監督の腕が現れているんじゃないでしょうか。ちょっと残念な合成美術の数々や「もうちょっと時代感出せよ」と言いたくなる神代文字の美術に関しては、まぁそれはそういうものとして飲み込むのがベストなんでしょう。

「悪意の伝播」「使命を継承する」という要素。それらの要素を受け継いだ人物を描いた映画であることから、かのサイコサスペンスの傑作映画「CURE」の影響を受けているのは間違いないかと。黒沢清が特別出演しているのもそういうことなんでしょう。彼の演技がめちゃくちゃ自然で何気に出演者の中では一番上手かった。さすがですね。

あと、最後の焼き肉屋のシーンの「バイオ鶏サワー」なる飲み物が気になる。ぜったいまずそう。
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