浦切三語さんの映画レビュー・感想・評価

浦切三語

浦切三語

悪は存在しない(2023年製作の映画)

4.4

自然豊かな土地で暮らす地元住民たちと、コロナ禍の補助金受給を背景にグランピング施設の建設を目論む芸能事務所の人間たちとの対立や融和を通じて、自然と人間の共生であったり、それぞれの立場を越えたコミュニケ>>続きを読む

インフィニティ・プール(2023年製作の映画)

4.2

これは「クローン技術を使った特異な法整備を持つ島」を「現代の市場原理」になぞらえた映画である。

テクノロジーの発展とグローバリズムにより拡大を遂げた「市場原理」……すなわち個人の自由化を促進させる現
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オッペンハイマー(2023年製作の映画)

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【動画版の感想】
https://youtu.be/RieZxujoSmg

一回観ただけでは消化しきれない何かがある映画なのでひとまず評点は置いておきますが、確かなのは、この映画はロバート・オッペン
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12日の殺人(2022年製作の映画)

3.5

だいたい警察サスペンス映画は主人公が事件の解決を通じて主人公個人の物語を解決に導くというのが王道だけど、この映画はちょっと違う。どうも実際の事件がモデルになっているらしい女子大生焼死事件の捜査担当にな>>続きを読む

DOGMAN ドッグマン(2023年製作の映画)

3.3

「パワー・オブ・ザ・ドッグ」ならぬ「パワー・オブ・ザ・ゴッド」……すなわち「キリスト教における神の力と、その継承」について描いたのがこの作品。

【動画版の感想/考察はコチラ】
https://you
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数に溺れて(1988年製作の映画)

3.5

ところどころに笑える要素あり。だけど振り返ってみると全然笑いたくとも笑えないという、なんだか不思議なブラックコメディ映画でした。カメラワークはZOOの頃より引き出しが増えていろいろ見せてくれるし、ひと>>続きを読む

ZOO(1985年製作の映画)

3.3

他のどの映画とも似ていない映画ってこういうのを言うのかもしれない。「美術が過剰」というより構造に対する執着が目立つ作品で、その執着さが観客の「映画を観る脳の構造」を侵食/変異させようという試みに溢れて>>続きを読む

マンティコア 怪物(2022年製作の映画)

5.0

この映画を観たのは今から二年前の東京国際映画祭の時だったが、観終わった直後の感想は「ワイの人生に余裕で食い込んでくる大傑作映画」だった。それから二年間、ことあるごとに、この映画は私の大脳の襞の奥で幽玄>>続きを読む

正しいアイコラの作り方(2024年製作の映画)

3.5

私のようなボンクラ映画好きでも、この映画が(というか原作小説が)何を指標にしているかはおおよそ検討がつく。それは、ファーストカットにおける主人公の一人称と台詞の調子を見れば明らかだ。おそらく原作者は森>>続きを読む

ボーはおそれている(2023年製作の映画)

5.0

傑作です。これは傑作。
少なくとも私のように、母親に対する愛憎と密かな復讐心を発作のように抱え続け、子育てに無関心で怠惰(あるいは無関心という名の"暴力"を振るっていた)のに、それを人前では決して出さ
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THEWILD 修羅の拳(2023年製作の映画)

3.1

このレビューはネタバレを含みます

主人公と因縁のある「とある少年」の成長した姿が物語中盤でスクリーンに登場するんだが、彼の言動を見ているうちに俺は「この物語、ヤバいことになるかも」という予感を抱いてしまった。ああいう立場にあるキャラを>>続きを読む

機動戦士ガンダムSEED FREEDOM(2024年製作の映画)

3.4

人間が間違いを繰り返しながらも歴史の堆積に意味を見い出して生きるように、SEEDにDestinyとファンを色々な意味で振り回してきたけれど、その積み重ねに意味はあったのだと訴えかけてくる"お祭り"映画>>続きを読む

熱のあとに(2023年製作の映画)

2.3

いま話題の小学舘。その小学舘から発刊されている『ホス狂い ~歌舞伎町ネバーランドで女たちは今日も踊る~』には、本映画のモデルになったホスト殺害未遂事件の一部始終が詳細に書かれつつ、そこには担当ホストに>>続きを読む

梟ーフクロウー(2022年製作の映画)

3.5

何かしらの特殊な身体的特徴や状態にある人間が、のっぴきならない状況を目撃してしまったとき、どのような行動で自身の証言に対する周囲の信用を取り付け、事件の首謀者を追い詰めていくか……『見えない目撃者』に>>続きを読む

哀れなるものたち(2023年製作の映画)

3.5

いままで「不条理な世界」を描いてきたヨルゴス・ランティモスだったが、「籠の中の乙女」も「ロブスター」「聖なる鹿殺し」も、その不条理な世界の描き方のリアリティラインは低くかった。そのリアリティラインの低>>続きを読む

ナポレオン(2023年製作の映画)

4.3

モラハラメンヘラ陰キャ軍人おじさんとしてのナポレオン
https://youtu.be/1amdgGo_QnE?si=bICXbfx2IzlToZqE

窓ぎわのトットちゃん(2023年製作の映画)

4.3

子供の目線で戦中日本を描いた傑作アニメ
https://youtu.be/f9InSajmbYw?si=c9NuJgSBx9rzRvxF

ある閉ざされた雪の山荘で(2024年製作の映画)

3.3

なぜこの原作を映像化したか?それはラストで判明する。

https://youtu.be/T1M8rnB6vvg?si=l1ZBBAQ4ILlFa-X5

ゴールデンカムイ(2024年製作の映画)

3.9

原作未読でアニメも未試聴。なんだけどかなり楽しめました。冒頭の203高地戦で完全に心を掴まれてからは、下村勇二監督のアクション演出に興奮し、目玉の馬車アクションで最高潮を迎える。アイヌの描き方も変に悲>>続きを読む

カムイのうた(2023年製作の映画)

3.0

古代インカの民たちは、あんなに巨大な建造物を作るだけの設計技術を持ちながら、しかし情報のやりとりとしての文字文化を持たなかったと言われている。彼らは「キープ」と呼ばれる、縄紐を使った暗号伝達術でコミュ>>続きを読む

二ノ国(2019年製作の映画)

1.8

永野芽郁の声優演技がド下手くそ過ぎるとか、主人公の片割れが「クスリでキマっているのか」ってくらいバカ過ぎて全然話が進まないとか、物語に絡まない設定が後付けでドカドカ降ってくるとか、一ノ国とニノ国とを行>>続きを読む

怒りの日(1943年製作の映画)

4.3

エロい。ものすごくエロい。濡れ場なんて一切ないのにめっちゃエロいぞこの映画。それは登場人物の関係性がもたらすエロスであり、役者の凄まじい演技がもたらすエロスであり、圧倒的な照明効果により高まる明暗のエ>>続きを読む

奇跡(1954年製作の映画)

3.8

ズームをほとんど使わず、フォローとパンのみの上品すぎる長回しの連続で語られる物語は、屋内撮影が多くを占めるにも関わらず、その劇的にしてさりげない陰影効果やシンメトリックな人物配置、さらには中盤の屋内シ>>続きを読む

ミカエル(1924年製作の映画)

3.6

なんか妙に面白かったな。エミール・ゾラとクロード・モネを足して2で割ったような名前の巨匠画家と、ウジェーヌ・ドラクロワと天使長ミカエルから拝借したような名前の画家の弟子。この二人の愛憎劇をシーザーとブ>>続きを読む

吸血鬼(1932年製作の映画)

3.8

面白い、面白くないとか、そうした表面上の感覚では測りたくとも測れないというか、そうした安易な感想ひとつでカテゴライズされることをこの映画自体が拒んでいるような。ストーリーを理解しようとしても劇中に登場>>続きを読む

あるじ(1925年製作の映画)

3.9

いまから100年近くも昔の映画だけど、語りの淀みなさといい、夫婦のパワーバランスの描き方といい、そしてなによりマッツ婆さんをはじめとしたキャラクターたちの立体感のエグさよ。めちゃくちゃキャラが立ってる>>続きを読む

ほかげ(2023年製作の映画)

4.3

太平洋戦争は終わった。でも終わったのは戦争という「状況」だけで、戦争が産み出してしまった空気たちは、まるで亡霊のように戦後の人々の体の奥深くで不気味に息づいている。就寝中に体を強ばらせて悪夢に苦しむ子>>続きを読む

(2023年製作の映画)

4.0

感想はこちら。
https://ncode.syosetu.com/n2918ez/104/

動画版
https://youtu.be/g_ODNBi9sOw?si=goykuXxocWPIXYG7

正欲(2023年製作の映画)

3.5

去年、デリヘル嬢からこんな話を聞いた。

ある日の蒸し暑い夏の夜、そのデリヘル嬢がホテルの部屋に入ると、そこで客として待っていたのは二十代前半ぐらいの男性だった。見た目はごくごく普通の好青年だったらし
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