MasaichiYaguchi

52ヘルツのクジラたちのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

52ヘルツのクジラたち(2024年製作の映画)
4.1
2021年本屋大賞を受賞した町田そのこさんの同名ベストセラー小説を、杉咲花さん主演で成島出監督がメガホンをとって映画化した本作からは、虐待、DV、性差別等により、現代社会で声なきSOSを発している人たちに寄り添うようなストーリー展開に心揺さぶられます。
自分の人生を家族に搾取されて生きてきた女性・三島貴瑚は、東京から海辺の街へ、或る痛みを抱えて一軒家へ引っ越してきた。
その街で母親から「ムシ」と呼ばれて虐待される、声を発することが出来ない少年と出会う。
貴瑚はその少年との交流を通し、かつて自分の声なきSOSに気付いて救い出してくれたアンさんとの日々を思い起こしていく。
杉咲花さんが演じる貴瑚を救おうとするアンさんこと岡田安吾を志尊淳さん、貴瑚の初めての恋人となる上司・新名主税を宮沢氷魚さん、貴瑚の親友・牧岡美晴を小野花梨さん、「ムシ」と呼ばれる少年を桑名桃李さんが、夫々演じている。
タイトルの「52ヘルツのクジラ」とは、他の仲間たちには聴こえない高い周波数で鳴く世界で最も孤独なクジラのこと。
本作は、その声なき声に耳をすませてくれる相手がきっといる、その声はいつか届くという切なる想いの先にある一条の光を繊細に描き出す。