テンポよく、それでいて描写不足もなく、塩梅よく先が気になるように話が展開していくから上映時間2時間があっという間だった。
主軸になっている難民Xっていう設定は面白いアプローチだなと。自身のルーツと照らしてみても、現実の問題とリンクしていて、言葉では上手に説明できないけれど、この映画が言わんとしていることは伝わってきたように思う。無意識の差別をなくすことは難しいよね。その点では記者への誹謗中傷は言語道断ではあるけど、マスコミ・週刊誌嫌いが加速する。
上野樹里さんはのだめやラストフレンズのイメージが強く残っているけど、良子さんみたいな柔和な大人の女性がよく似合う。こんなお姉さんがいたら好きにならざるを得ない。芝居はもちろん、とにかく雰囲気がとても素敵で、可愛らしさと綺麗さが同居したビジュアルも本当に好き。
林遣都さんも良かったな。最初の気まずい感じとか時折見せる人懐っこい表情とか、辛いシーンとか。魅せるのが上手だよね。
嶋田久作さんと升野さんもピッタリというか、こういうパワハラ上司やだな〜ってしっかり思わせてくれる振り切った演技が良かった。この2人のおかげか川瀬さん扮する内田さんがめちゃくちゃ良い人に見えてくる。
柏木夫婦も良いよねえ。酒向芳さんと原日出子さん。ちょっとサスペンス風味ではあったけど記者会見周りのシーンが印象的。
賛否がありそうな腕にカメラが寄る演出はどことなく詩的な表現でむしろ好み。小説の地の文って感じもする。ラストのスクラッチの流れと併せたシーンでは鳥肌が立った。なるほどなあと。まんまと騙された。よくできてるよこれ。
そこからのエンドロールでは素敵な主題歌が流れるのもあって、余韻に浸れる時間になっていてグッド。満足。今よりも少し誠実に生きてみようと思った。
キャストパワーももちろんあるけど、演出・脚本も合わせて好きな作品だなあ。パンフレットも買っちゃった。
ジャンルはミステリーって聞いていたけど、結構ロマンス寄りだったのがポイントかも。面白かった。
188/2023
