面白いけど、笑えない面白さ満載の作品という感じ。なぜかというと、現代資本主義、階級社会、排外主義のメタファーだということが、観ていてすぐ分かるからだろう。そのなかでヒリヒリするくらい"凡庸"な挙動を展開する人々。身も蓋もないリアリティがそこにある。
対立する相手、憎むべき相手にも、自分と同じように家族や夢があり、何かを守ろうとし、何かに怯えている。そのことをまざまざと描いているところが良かったし、観ていて辛いところでもあった。
この作品の良いところは、何より、結末をフワッとしたものにせず、今の社会がどう転じるべきか明確に（リベラルな）メッセージを発しているところだろう。（元）高級マンションを転倒させたカメラワークにそれが凝縮されている。
あと、『はちどり』のパク・チフが助演しているのだが、同作へのオマージュとみられる演出やカットがあり、これまた、監督がリベラルな意図として送り出していることが感じとれた。
主題歌の「アパート」は韓国の名曲であり、なんというか、ある意味、残酷すぎる選曲だなあと思った。(笑)でもこの曲しかないだろうなあという、なんとまあ容赦のない嵌まりかたである。
ちなみに原作は韓国のWeb漫画だが、かなり脚色されているとのこと。
