竜平

ノーウェア:漂流の竜平のレビュー・感想・評価

ノーウェア:漂流(2023年製作の映画)
3.6
ひょんなことからコンテナの中に取り残されたまま海へと投げ出されてしまう女性。救助や脱出の術なし、水や食料も僅か、その運命やいかに、という話。

わりとシンプルなワンシチュエーション系のサバイバル及びスリラーを勝手に想像してたんだけど、まず背景が結構エグい。食糧や物資の不足によって何やら政策が変わり秩序もなくなり崩壊しかけてるというスペインが舞台で、高齢者や子供や妊婦までもが弾圧を受けていて時には命を狙われてしまうという現状。近未来的な設定と言えるかな。で主人公もまさに妊婦で、夫と共に逃げつつ追われつつなんやかんやあってコンテナ内&海面にて一人孤立してしまう、という。ここまででもすでにシリアス。コンテナ内では水と食料は僅かだし、穴から海水は漏れてくるし海には嵐も来るし、加えて陣痛や破水まで、かなりの極限状態。いろいろ巻き起こる中で描写がその都度リアルだったり、あと恐らく本当にやってるとこもあったりしてなかなか鮮烈。主人公の女優が何気に体当たりの演技をかましてる。途中出てくるあの手この手のDIYがじつはおもしろい。コンテナ内の「これは使えないなぁ」ってな物が後でちゃんと役に立つという、伏線回収のような流れも楽しいところ。

個人的には例えば『FALL/フォール』みたいなワンシチュエーションものを気軽に気楽に見て、最終的にちょいお釣りが来たら御の字、ぐらいの気持ちだったんだけど、今作は意外と重ためで、気楽にとはいかなかった感じ。描写もグロめだし。極限状態での精神状態やら自分との闘いやらの話は例えばダニー・ボイルの『127時間』あたりに近いかも。もし自分がこんな状況に陥ったら、みたいなことも考えてみたりして。まぁ今作は女性が主人公ってのがデカくて、ここまでの状況下でなくとも、お腹に我が子を宿し、また常に寄り添いながら幼い我が子を世話し育てていく、そんな「母親」の大変さ、偉大さを感じれるはず。そーゆー面では男に見てみてほしい一本、かな。
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