ムニ

車軸のムニのレビュー・感想・評価

車軸(2023年製作の映画)
3.0
ジョルジュ・バタイユ、三島由紀夫。退廃した甘美なる世界を、新宿歌舞伎町のホスト界を舞台に描き出す挑戦に満ちた作品。

日常に不満はない、けれど満足はできない上流階級に生きる人間の華麗なる苦しさと痛みを、見事に体現したキャスティングの妙が光る一品。
そこはかとなく昭和のピンク映画を彷彿とさせるざらついた画質で語られる五つの小編で構成させる物語は、単純なエロティシズムを超えた繊細な会話劇で構成され、フランス文学のような独特のリズムを描きながら圧倒的に美しいラストの衝撃へとなだれ込んでいく。

新宿の再開発とともに、常に変化を余儀なくされる新宿歌舞伎町の今を濃密に映像に刻み込んだ点でも意義ある作品だろう。

現代映画では稀となった、シンプルな純文学の薫りを楽しむ大人のナラティブ。
鑑賞後は高揚感に満たされる不思議な感覚に浸ることになるので、他の用事をすべて終えてからの鑑賞をオススメします。
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