ムニさんの映画レビュー・感想・評価

ムニ

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あんのこと(2023年製作の映画)

4.3

心が、引き裂かれるように痛い。
感情が怒涛のように揺り動かされる。

ただ、ここには悲しさが在る。

新型コロナウイルスによる分断と亀裂を描く作品はこれまでにも数多く存在している。
その中でも本作は、
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ソイレント・グリーン デジタル・リマスター版(1973年製作の映画)

4.0

「もしも」が現実になる時代。
もしもコンピューターと話せたら。
もしも空を飛ぶ車があったら。
そして、
もしも人口が増えすぎて食べ物がなくなったら。

この映画は1970年代に作られた古典である。だが
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不死身ラヴァーズ(2024年製作の映画)

4.2

すれ違うと、誰もが振り返る。クラスが変わると、靴箱はラブレターであふれ返る。放課後は、いつも体育館裏に呼び出される。そんな学校名物の美少女ではない。無いけれど、気が付いたら誰もが気になって仕方がない。>>続きを読む

青春18×2 君へと続く道(2024年製作の映画)

4.5

歩く。出逢う。別れる。電車に乗る。また、歩く。ただ、それだけなのに。
旅は、人の心に淡い夢と、後悔と、暖かい記憶をくれる。だから、人は旅をする。

台湾と日本を舞台に、日台の人気俳優を配して描かれるロ
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無名(2023年製作の映画)

3.3

男の色気に、全編にわたってむせ返る。そんな作品だ。

太平洋戦争前夜。中国と日本の一触即発とも言える緊迫した空気に満ちた時代。時代の裏で暗躍していた名もなきスパイたちの華麗なる戦いと、裏切り。堕ちるも
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変な家(2024年製作の映画)

3.8

日曜日、ポスト。
近くらしい中古戸建の販売チラシ。
その間取りをぼんやり眺めながら、贅沢な新生活を夢見る、そんな季節。

でも、もしも。
その間取りに、想像を絶する悪意と狂気、そして秘密が隠されている
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四月になれば彼女は(2024年製作の映画)

3.6

印象的なシーンがある。

佐藤健演じる精神科医が、長澤まさみ演じる彼女の失踪に打ちひしがれながらも、少しずつ前を向こうとする姿を見て、仲野太賀演じる後輩が穏やかに語る。

「そういうところ、ちゃんと彼
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デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)

3.3

「メッセージ」「灼熱の魂」など、重厚なドラマ性と映像美を兼ね備えた作品群を多数発表するドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作。

前作のパート1で提示した複雑な世界観と、繊細なビジュアル描写をさらに深化させて描か
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瞳をとじて(2023年製作の映画)

4.5

見る者の心を豊潤に満たしていく、華麗なる人間讃歌である。

寡作ながら、その独特なリズムと語りで圧倒的な支持を集め続けるビクトル・エリセ待望の最新作。

ある映画の撮影。突如失踪した主演俳優。その空虚
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ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ(2023年製作の映画)

3.0

極めて現代的な感性を意識したホラー作品である。

幼い頃、弟の誘拐を阻止できなかった事をトラウマに抱え、悶々と日々を生きる主人公、マイク。心の支えとなっていた妹との暮らしさえ奪われつつある困窮を脱する
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その鼓動に耳をあてよ(2023年製作の映画)

4.2

人間は、数字じゃない。

名古屋の片隅に、「絶対に断らない」と評される救急外来がある。工場労働者、高齢者患者、そしてコロナウイルス感染症。あらゆる患者と向き合い、苦悩し、戦い続ける救命チームを見つめ続
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サイレントラブ(2024年製作の映画)

4.2

文句なく、美しく薫り高い物語である。

とある事件をきっかけとして声を失った男と、とある事故をきっかけとして視力を失った女。
孤独と失意に苛まれた二人は、才能と財力が物を言う音楽大学で出逢った。

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ゴールデンカムイ(2024年製作の映画)

4.0

疾風怒濤、縦横無尽、一撃必殺。
和の風情極まる表現がしっくりはまる、現代の日本映画としては異色の超攻撃的作品である。

「キングダム」のヒットにより、アクション俳優としての多彩な魅力を纏った山崎賢人最
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BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-(2024年製作の映画)

1.6

「ONE PIECE FILM RED」を大ヒットへと導いた現代アニメーション界の基軸、谷口悟朗の劇場最新作。改造を施された最凶の人造人間を巡る、バイオレンス描写満載のアクションエンターテイメント。>>続きを読む

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)

4.0

京極夏彦、横溝正史の世界観が好きな方々には、まさに垂涎の一品である。

日本を代表する漫画家の一人、水木しげるの代表作として今でも多くの人に愛される名作、ゲゲゲの鬼太郎。その主人公、鬼太郎の出生の秘密
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ラ・メゾン 小説家と娼婦(2022年製作の映画)

3.5

仮りそめの愛、国が変われば描き方も違うものである。

2020年公開、伊藤沙莉主演で注目を集めた「タイトル、拒絶」もまた、大都市の片隅で生きるセックスワーカーの悲哀と躍動を瑞々しく、生々しく描き出した
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サンクスギビング(2023年製作の映画)

3.5

イーライ・ロスの世界が、戻ってきた。

クエンティン・タランティーノとロバート・ロドリゲスによる「グラインドハウス」プロジェクトにおいて、幻の予告編として制作された「サンクスギビング」を、100分の長
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劇場版 SPY×FAMILY CODE: White(2023年製作の映画)

3.7

映画的な遊び心と、好奇心にあふれた実験的作品である。

既にお馴染みとなった仮りそめの家族、初めての旅行!そこに降りかかる、東西戦争を巡る秘密裏の大作戦!

テレビアニメ版のスタンダードな番外編かと思
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ウィッシュ(2023年製作の映画)

4.1

100年を超えて、さらなる高みへ。
高々と未来を歌い上げる、力強い一品である。

数え切れないほどの、勇気と希望、そして願いを信じる物語を生み出してきたウォルト・ディズニーアニメーション。その100周
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屋根裏のラジャー(2023年製作の映画)

4.3

心地よい、温度の高い映画である。

スタジオジブリの精神を純度高く継承した作品作りで知られるスタジオポノックの長編第2作。
子どもの想像力が生み出した空想の友達、通称イマジナリーが辿る、心躍る勇気のフ
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VORTEX ヴォルテックス(2021年製作の映画)

3.9

やはり、没入映画の鬼才、ギャスパー・ノエの個性が隅々まで詰め込まれた作品であった。

音楽、映像、説明を削ぎ落とした物語が絶妙な塩梅で混ざり合い、観客を徹底的に突き落とす没入型の映画を一貫して撮り続け
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ナポレオン(2023年製作の映画)

4.0

唯一無二のアヴァンギャルドな作風で世界を席巻した本物の映画監督、スタンリー・キューブリック。その天才を持ってしても、その伝記の完全なる演出を諦め、自身の「バリー・リンドン」にその執念を叩きつけたとされ>>続きを読む

(2023年製作の映画)

4.0

コメディアン×映画監督、その華麗なる2つの世界で成功を納め続ける天才、北野武だから撮る事ができる稀有なる一品である。

日本史における重大事件の一つとして、現代に語り継がれる「本能寺の変」、その顛末を
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車軸(2023年製作の映画)

3.0

ジョルジュ・バタイユ、三島由紀夫。退廃した甘美なる世界を、新宿歌舞伎町のホスト界を舞台に描き出す挑戦に満ちた作品。

日常に不満はない、けれど満足はできない上流階級に生きる人間の華麗なる苦しさと痛みを
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北極百貨店のコンシェルジュさん(2023年製作の映画)

4.7

瑞々しいセンスと、豊かなクオリティに裏付けられた見事な小品。

絶滅種を含めて、様々な動物たちがお客様として訪れる少し不思議な百貨店「北極百貨店」に新人コンシェルジュとして配属された主人公の成長を描く
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ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)

4.1

まさに、心躍る快作である。

著名なる映画監督たちが、自らのイズムを掲げて挑んできたGODZILLAというシンボル。

今回、その大看板に挑む好機を得た山崎貴は、これまでの作品で粛々と紡ぎあげてきたド
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キリエのうた(2023年製作の映画)

4.4

万華鏡を観ている。
そんな印象の作品である。

近年の岩井俊二作品は「ラストレター」に代表されるように、複合的な時間軸を小刻みに切り貼りしながら作り上げる演出が主流である。
様々な立場のキャラクターを
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春画先生(2023年製作の映画)

4.0

2019年、京都で開催された国際写真祭の中で開催された、春画とアートを散りばめた小さな企画展。それは、強烈な淫靡さと品を感じる優美が入り混じる独特の世界観に満ちていた。触れたいけど、近づきたくない。そ>>続きを読む

白鍵と黒鍵の間に(2023年製作の映画)

3.4

昭和63年。
喧騒たゆたう銀座。
夜のネオンたなびく街に蠢く
名もなきバンドマンが織り成す、
たった一夜の狂騒曲。

池松壮亮、仲里依紗。
高橋和也、森田剛。
緩急自在に演じ分ける芸達者たち。

それ
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BAD LANDS バッド・ランズ(2023年製作の映画)

1.8

顔の強い役者は、やっぱり強いのである。

近年、女優として多彩な活躍で魅せる安藤サクラの待望の主演作を、骨太の人間劇を軽やかに描き切る俊英、原田眞人監督が撮る。

この取り合わせは、多くの映画好きの興
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戦慄怪奇ワールド コワすぎ!(2023年製作の映画)

4.1

相変わらず滑稽で、限りなく挑発的で、やっぱり愛らしい。そんな8年ぶりの新作である。

長年、その看板俳優として主演を張り続けてきた強面プロデューサーと、冷静沈着なディレクター。今作で最後!と謳う本作は
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アステロイド・シティ(2023年製作の映画)

3.1

ひどくぶっきらぼうで、ひどく情熱的で、そしてひどく精緻に創り込まれた複雑怪奇な一本である。

細部に至るまでオールスターを配して描かれる、独創のトップランナー、ウェス・アンダーソン監督の最新作。

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春に散る(2023年製作の映画)

4.7

気が付けば、掌には爪跡が刻まれ、額には汗が溜まり、心は静寂の叫び声を上げていた。

そんな映画を、観た。

「深夜特急」などの作品で知られる孤高の作家、沢木耕太郎による小品を実写化した本作。
緩急自在
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ソウルに帰る(2022年製作の映画)

3.0

「自分は、◯◯人である」「私は、◯◯に誇りを持っている」その、ささやかながらも強靭な拠り所を持つ意味、可能性を鋭く突き付けてくる一作である。

幼い頃に養子に出され、見た目は完全に韓国人でありながらフ
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リボルバー・リリー(2023年製作の映画)

3.9

ジャンルを縦横無尽に飛び越える技巧派、行定勲の本領発揮となる作品である。

アクション俳優としてのキャリアを着実に重ねている綾瀬はるかを主演に迎え、愛と正義のために決死の戦いに赴く一人の女性をダイナミ
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遠いところ(2022年製作の映画)

3.5

これほどまでに、鋭く砥がれた刃物で観るものの心をえぐり取る破壊力のある作品は、近年なかなかお目にかかれない。

沖縄県・コザで、静かに、慎ましく暮らす一組の家族。ギリギリの暮らしの中に、小さな幸せを描
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