びーち

アイアンクローのびーちのレビュー・感想・評価

アイアンクロー(2023年製作の映画)
3.9
往年の名レスラー“鉄の爪”フリッツ・フォン・エリックとその息子たちに降りかかった悲劇の物語。馬場の顳顬を鷲掴みにする親父の姿はTVでよく観たし、三男の日本での客死をはじめとする数々の禍もなんとなく知ってはいた。だが、これほどとは。興行師でもある父に従いプロレスラーになった四人兄弟は、皆素直で従順で仲が良く、道を外す者は一人としていない。しかし、その生真面目さが災いしたとも言える。一方父は、子に夢を託した分幾らか強引なところもあるが、子の死も冷静に受け止め、ショックを受ける総領ケビンと比べると、むしろ冷酷にすら思える。父の、息子たちに対する愛が少なかったようにしか思えないのだ。そして、それを埋めてあまりあったのが兄弟愛で、それがいっそう悲しみを誘うのである。
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