月子映画ムーンライトはいいぞ

ビニールハウスの月子映画ムーンライトはいいぞのネタバレレビュー・内容・結末

ビニールハウス(2022年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

盲目と痴呆の夫婦のケアで生活している主人公、ムンジョン。
息子は少年院に入り、自身はビニールハウスを改造した貧しい家に住んで、DV被害者の会?にも通っている。

そんなある日、盲目のテガンが軽度痴呆と診断される。
そして妻ファオクはせん妄からムンジョンに襲いかかり、ムンジョンが抵抗したことで頭を打って不幸にも死んでしまう。

追い詰められたムンジョンはファオクの死体をビニールハウスのタンスに隠し、代わりにやはりこちらも痴呆の実母を連れてきて、テガンの家に住まわせる。

微妙に様子や声とか違うわけですが、テガンは軽度痴呆なので、自分がおかしいと思うわけなんです。
で、奇妙な新生活が始まるーー

って、ここまでめっちゃ面白い設定なんですけど、あんまりハラハラ感がなかったのは、テンポがイマイチ良くなかったり、音楽で無理やり煽ったりしなかったからかな
?? パンフ買ってないのでよくわかりませんが、あんまり煽らず、日常の繋がりとして監督が描きたかったのかもしれません。
自身の母も痴呆で入院してるのに、お金稼ぐために盲目と痴呆の夫婦の世話をして、子供は貧困からかグレて少年院。
日本でもこれから増えそうですもんね…

で、もうひとつポイントとなるのが、この被害者の会で知り合うスンナム。
母親に捨てられたことがきっかけで自傷癖のある、軽度知能障害の女の子。
この女の子、今は騙されて作家とかいう変な男に囲われているらしい。
ムンジョンはそんな彼女を気の毒に思い、好きにさせちゃだめ、警察に行かなきゃ、それかいっそ殺しちゃうとか?と話す。

と、思ってたら、後半で、この作家先生というのがテガンの息子で、しかもムンジョンとも不倫してることが描かれるんです。
老夫婦のケアのお給料を払ってるのはこいつなので、ムンジョンにとっては雇用主。断れないものがあったんでしょう。ムンジョンの願いは貯めたお金で綺麗なマンションに息子と二人で住むことなので。

地獄に地獄だ〜! と思ってたんですが、
ある日、ついにこのスンナムが好きに扱われるのに耐えかねて、ムンジョンさんが殺しちゃえって言ってたもん…と先生をカッターで刺す。

同じ頃、少年院から釈放された息子。多分こいつも、厳しおじさんの家に行きたくないから、お母さんと一緒に住みたい〜とめそめそ演技をしてただけ。
不良仲間と酒を買って、さあどこで飲もうかとなったとき、思いついたのが母の住むビニールハウス。

勝手に穴から入り込んで、酒盛りを始めます。

その頃、テガンは将来を憂いて、ファオク(本当はムンジョンの母)を絞め殺し、自分も首を吊って死んでいます。

ひとり、新しく借りた部屋にいるムンジョン、やっと手に入れた理想の生活。あとはあの死体をなんとかするだけ…と、ビニールハウスに火をつけにやってきます。

さて、誰か来た!と隠れる息子と不良仲間。

それに気がつかず、火をつけてしまうムンジョンーー

焼け落ちるビニールハウス。終わり。

という、貧困と不幸がさらなる地獄の連鎖を生む地獄のお話なんですけど、これ、ポイントはムンジョンがかわいそうなだけじゃないとこかなって思うんですね。
本当なら、ファオク奥様が死んでしまったところで(事故だし)警察に連絡すべきところを、息子と暮らすお金欲しさに連絡しなかった。
もっというなら、明確に描かれていないけど、もしやスンナムに近づいたのは、殺しちゃえとけしかけて作家先生を殺させるため…?

などなど、本当に設定は面白いんですけどね。ハラハラ感はなく、半地下以上という宣伝文句はちょっとあれかなーと思いました。
いっそバレそうでバレない入れ替わり共同生活のところをもうちょい長く取ったら、全体が締まったかな?

なかなか、半地下超えは難しいですね。
でも、悪くはなかったです。