sasami99

アリラン ラプソディ〜海を越えたハルモニたち〜のsasami99のレビュー・感想・評価

3.0
在日二世の金聖雄監督が、自身の亡き母への思いから、川崎に生きる在日コリアンの女性たちを主人公にと撮りはじめた作品。戦争、日本への移住、差別との闘いという彼女たちの波乱万丈な来し方にスポットを当てる。彼女たちの口からは、聞いていると心が塞いでしまうような苦労が聞かされるが、語り口は実に淡々としていて、また持ち前の明るさが映画に癒やしのムードを与えている。一方で、2016年頃に川崎・桜本で頻繁に行われていたヘイトデモの様子を記録してあるのは、忌まわしいが忘れてはならない負の歴史を記録しているという意味で貴重だ。
そういえば、日本人が在日コリアンや韓国人の“おばあさん”のことを“ハルモニ”と呼ぶことについて、「不快だ」という在日コリアンの方のポストを目にしたことがある。日韓併合の歴史や、日本社会がいかに在日に対し冷酷かを考えると、当事者のそうした気持ちは忘れてはならないと思う。“おばあさん”にも“老婆”にも、“ハルモニ”あるいは“ハンメ”“ハルメ”ほどの温かさや親しみやすい響きを持っていないから、どうしても使ってしまうのだが…。「日本に暮らす私たちは、映画やドラマ、音楽や食など韓国文化に魅了され続けている。でも、在日たちの存在、歴史がすっぽり抜け落ちているような気がする」という監督の言葉を忘れないようにする。
sasami99

sasami99