花火

Polar Nightの花火のネタバレレビュー・内容・結末

Polar Night(2023年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

純度の高い映画美学校座組のスタッフ陣営によって繰り出される幻想奇譚。血を飲まなければ生きていけず、陽光を浴びると蒸発する河野知美がモンスターである…という風に思わせて、実は彼女はあくまで自分の生態に従順なだけで、怪物はむしろ美しい彼女の存在に当てられて勝手に狂っていく周囲の女性たちの方であるというのがミソ。だってどう見ても、自分の指を切りつけて血を吸わせようとした峰平朔良が河野に逃げられて、外で待っていたカトウシンスケの車に乗って河野がカトウの血を吸ったかと思えば、運転席のサイドガラス正面に回り込んだカメラが外を見て驚くカトウを捉えると、外に切り返したカメラはそれを見つめる峰平を写し出す…という一連のシークエンスは、もう峰平側を化け物のように演出しているでしょう。廃墟に連れ込まれた河野が暴漢を斬りつけるロングショット→血の滴り落ちるナイフという編集のリズムも巧み。そしてみんな上手いけれど、MVPは廣田朋菜だと言いたい。廣田が暴漢たちを誘い込んで返り討ちにするくだりの、窓に貼られた遮光シートが剥がれてガラスについた手が血痕を残しながら滑り落ちていく。もう完全に怪物そのものな廣田のアクセル全開ぶりが見ていて楽しい。自分に振り向かないことを悟った廣田が置かれていたナイフで首を掻っ捌く→噴き出た血が河野の顔に飛ぶ→その切り口に河野が吸い付き2人が倒れ込む→光を浴びて悶え苦しむ河野、という終盤の画面の連鎖の哀しい美しさといったら。中瀬慧&玉川直人の撮照コンビ得意の強調された外光も設定とがっちり噛み合っていて見事。庭を見たいと伝えてそこで何があったかを語る河野、そのシーンで響く風の音の異界に繋がってしまっている感。流石の川口陽一である。
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