坂本さんの息遣い、ダンパーペダルの音、鍵盤から指が離れ、弦が振動を止めるときの細かなニュアンス……スタジオで坂本さんが鳴らすあらゆる音が明瞭に聴こえる。
ピアノって本当はこんな音が鳴っているんだ、と思った。ふだんいろいろなところでピアノの音を聴いていて理解していたつもりでいたけど、ピアノの音なんて全然知らなかったんだな、と。
否が応にもその場で鳴っている些細な音(映画の中のみならず、観客席から聞こえる音にも)に意識的になる。そんなわけでこの映画をみながら思い出していたのはジョン・ケージの4分33秒。
照明もこの上なくミニマルで美しい。基本的に画面に映っているスタンドライトとあともう一灯だけなんでしょうか。
映像はモノクロームなのに画面に色がついているように見える。あのライトが暖色だと思ったのはなぜだろう。