烏丸メヰ

新解釈番町皿屋敷 お菊寺の烏丸メヰのネタバレレビュー・内容・結末

新解釈番町皿屋敷 お菊寺(2023年製作の映画)
3.1

このレビューはネタバレを含みます

“カウントダウン”にまつわる三つの話からなるホラーオムニバス。
三話ともストレートで絵面が強く個性豊か、質感の異なる「恐怖」が味わえ、なかなか怖い。

個人的に、これだけの映像やストーリー展開やカットの表現力があるとジャンプスケアは無くても全然怖さは損なわないし逆に悪手では?と思ってしまうのだが、監督は手法としてのジャンプスケアが好きなのかな。


恐怖シーンやストーリーは三話ともかなり面白かったが、個人的に、導入部分含む数ヵ所に首を傾げる箇所があり気になってしまった。
・最もヤバいのが「数下り」の話である(数下り、という特定の話なのか何なのか分からず三回巻き戻した。共通して数下りにまつわる話である、みたいな言い方でないから分からない)
・本当は、お菊は皿でカウントダウンしていた(その意味が不明。番号の振られたセットの皿を数えていって、1の皿が割ったものだったから、みたいな理由説明なし)
・「ある男のお菊体験談を書き起こした」「お菊体験談はみなカウントダウンしていた」(お菊体験談を残したのはある男=一人、とイメージさせつつ、え?あっ話してたのは複数いたの?という言葉のわかりにくさ)
・供養者不明という三話め(本当に誰が語ったのか分からないし、カウントダウン要素薄い)

で、一番気になったのは昭和40年代に採話された設定のエピソードを「現代風に脚色しています」というもの。
車が現代の車種とかくらいなら分かるが、ほぼリアルタイムに写真をやりとりして手遅れに気づく、というのはネガ現像時代の現代脚色としては過剰すぎる。当時だとして元々どうやってたの?ってなってしまった。
別にスマホ普及した現代の話、でも何ら怖さは変わらないし、昭和の脚色とした理由が謎だしその分気が散ってしまった。

一話め:『人志松本のゾッとする話』のかまいたち山内さんの話を以前観ていたので、その既視感が逆にリアルに感じられた。前述の変なジャンプスケア現代脚色という前置きが無ければ一番好きだったかも。

二話め:最もオーソドックスな怪談&ヒトコワで、老若男女に通用する正統派の「怖い話」。
女性警官から例の男性警官への呼び方が、先輩・姓・名と不安定なのはわざと(公の場で名前呼びできないのはともかく)パニック的リアリティとしてなのかな。

三話め:監督らしさと俳優さん達の凄さMAXの個人的ベストエピソード。誰が寺に持ち込んだのか不明とされ実際に想像もつかない上、カウントダウン要素はそこまでキーと言えず主題からやや離れた感はあるが、振り切ったオチと身近にしてダイナミックなゴア表現のパワー、狂ったキャラクターの数々と俳優さんの演技に打ちのめされる。


同監督の『超擬態人間』も絵づくりとか表現はかなり好きな映画だったので、よりJホラー色の強い作品も観られたのは嬉しいし、好みのシーンも多かった。
烏丸メヰ

烏丸メヰ