Omizu

ハッドのOmizuのレビュー・感想・評価

ハッド(1962年製作の映画)
3.9
【第36回アカデミー賞 主演女優賞他全3部門受賞】
『寒い国から帰ったスパイ』などの名匠マーティン・リット監督作品。アカデミー賞では監督賞、主演男優賞(ポール・ニューマン)、主演女優賞(パトリシア・ニール)、助演男優賞(メルヴィン・ダグラス)、脚色賞、撮影賞、美術賞の7部門でノミネートされた。そのうち主演女優賞、助演男優賞、撮影賞を受賞した。

非常に地味な西部劇ではあるが傑作。じわじわと迫り来るサスペンスと叙情性、淡々とした語り口が素晴らしい。

これは生き方の話だ。土地と仲間の絆を大事にする旧世代、自由を謳歌し変化を求める新世代、若いロンが最後にどういう決断をするか。より新しい新世代が求める生き方を象徴的に描いている気がする。土地を離れる、という決断をした時点でロンは彼らより一歩進んでいる。

描き方が非常に丁寧でいい。西部ならではの乾いた空気感を感じられる撮影も素晴らしい。画角がとにかくよく、牛の殺害シーンとか引きのショットが冴え渡る。

正直パトリシア・ニール演じる唯一の女性、家政婦のアルマは主演ではないと思う。出演時間も少ない上に途中退場してしまうので。演技自体は素晴らしかったけど。老いた父を演じたメルヴィン・ダグラスは助演男優賞として文句のない名演。

ポール・ニューマンの筋肉、反抗的な態度。とてもいい。常に汗をかいている感じのいかにも「西部の男」という佇まいはぴったり。パトリシア・ニールにあけるならニューマンにもオスカーあげてくれ!

西部劇としては地味ではあるが、舞台演劇としても成立しそうな繊細な人間ドラマで僕はすごく好きだった。
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