satchan

ハッドのsatchanのネタバレレビュー・内容・結末

ハッド(1962年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

白黒映画です。ポール・ニューマンが牧場主の息子ハッド役で、父親ホーマーと甥ロンと暮らしています。「オレンジなら、テキサスにもあるのに、カリフォルニア産とは結構なことだ」みたいなセリフがあったので、舞台はテキサスかな。男3人暮らしなので、アルマという女性が住み込みで家事をしてくれています。アルマの独特の声と話し方が印象的でした。アルマ役のパトリシア・ニールがアカデミー主演女優賞を、父親ホーマー役のメルヴィン・ダグラスが助演男優賞を受賞している作品のようです。ハッドは人妻をひっかける遊び人ですが、家政婦のアルマをめぐって、甥のロンとは恋敵です。

ある日、一頭の牛が死んでいるのを見つけ、獣医さんにみてもらうと口蹄疫の可能性を示唆されます。周りに死肉を狙うバルチャーが沢山映っていました。口蹄疫の検査に6日かかると言われ、その間の居ても立っても居られない親子の様子が描かれます。牧場存続の危機なので、当然のことだと思いました。ハッドは早く父親の牧場を継ぎたいと考えているのですが、父親はそれを認めません。その理由は、ハッドのお兄さんの死と関係がありました。ハッドのお兄さんは、ロンの父親でもあるのですが、ハッドが飲酒運転していた車の交通事故で亡くなったのです。そのことで、ハッドと父親ホーマーの関係は、ギクシャクしています。昔の映画って、親子関係のギクシャクを描いているものが多いですね。

Quarantine(隔離・検疫)と書かれた看板が印象的でした。検査の結果は最悪で、口蹄疫だと分かり、大切に育てた牛を殺傷処分することになります。このシーンはやはり衝撃的です。ブルドーザーで穴を掘り、牛を穴に追い込み、ライフルで打ち殺すのです。そして埋めてしまう。他の家畜への感染を考えたら、仕方のないことなのかもしれませんが、人間の観点からするとでしょ、と思えるから心が痛むのかな。食肉が必要なのは人間なわけで。でも、全ての牛を野に放したとしても、やがて死んでしまうし、感染が広がってしまうかもしれない。避けられない、逃げられないジレンマです。

頑固なお父さんホーマーが大切にしているロングホーンを自分で殺すというシーンも、ぐさっときました。孫のロンが、「ロング・ホーンだけは、逃してあげようよ」という気持ちも、痛いほどよく分かります。全ての牛を失い、ホーマーは使用人を解雇します。家政婦のアルマも、出ていくことに。そして、ホーマーが落馬して、この世を去ってしまい、ハッドを慕っていたロンまで、ハッドに愛想をつかし、牧場を出て行ってしまう…という悲劇につぐ悲劇。望み通り、牧場を継いだけれど、土地を売り払ってしまって、一人残されたハッドの心情はどうだったのでしょう。万々歳とはいかないと思うのですが。

いくつか時代を感じる小道具がありました。ロンが胸ポケットに入れたラジオに、一瞬、アイポッド?と錯覚を覚えてしまいました。それともう一つ。ハッドがビール缶を開ける時に、缶切りで2箇所穴をあけているんです。プルタブって、昔なかったんですね~。今度、ビール缶を缶切りで開けて飲んでみようかな、なんて思いました。
satchan

satchan