良い作品だった。
マイノリティはオピニオンを求められ、それが市場主義においては商品となる……わけだが、その過程を商品化しかえす、市場主義の反省的意識が撮られている。
市場主義に対する抵抗というよりは、そうした価値一元的な空間の愚劣さと、逃げ場のなさが提示されいるように感じた。
ポリコレ的なマジョリティのマイノリティへの視線を扱いながら、「黒人」の言語や身振りを露骨に商品化を問題にしてる点は、『ゲットアウト』との距離を感じさせる。
ともあれ、セロニアスが「モンク」と呼ばれ、要所要所でモンク風のピアノが流れる演出は、誰の名において、どのように表象され、どう消費されるのかという、2時間弱の本作のテーマを「要約」してくれておりにくい。
というより、こうして評されることも織り込む、ぬかりのなさを感じる。
そうした作話が重ねられるなかで、セロニアスが作話することで母親と接する場面は、フィクションの「ポテンシャル」を暗示するようにも思えた。