よどるふ

アメリカン・フィクションのよどるふのレビュー・感想・評価

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)
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ことビジネスの場においてフィクションは“商品”であり、そこにはさまざまな利害関係者たちが絡んでくる。そしてそんなフィクション(=商品)を現実の映し鏡として捉え、「作品を語ること」を通して、さも「現実と向き合っている」態度を取っているかのような人たちに対する皮肉をたっぷりと効かせた「フィクションを現実と見紛うこと」の危うさを描いた作品。思わず笑ってしまうような状況を描きながら、その状況に呆れ果てた主人公のリアクションを見せる本作のタッチは、まさに“ブラック”ユーモア的と言えるだろう。

そういった作品の肝の部分は、本作が紹介されている場で事前に知っていたのだが、実際に観てみると主人公の抱える家族のさまざまな問題が前面に出てきており、その部分も見応えがあった。いずれにせよ、この映画は観る者を「フィクションの消費者」として自覚させる作りになっており、フィクションを通して現実を得意げに語る者に冷や水を浴びせるような作品になっている。 印象に残ったカットは、作家の講演会が開かれているシーンで、観客のスタンディングオベーションで主人公が見えなくなっていくところ。まさにカリカチュアされた“大衆”を描くことができている見事なカットだった。
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