ワンコ

アメリカン・フィクションのワンコのレビュー・感想・評価

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)
5.0
【居心地】

※ Amazon Prime

皮肉たっぷり、とてもウイットに富んでいて、示唆的、自分の身の回りを見渡して考えてみようと思わせるような作品だ。
それにループ感も最後にはあって、エッ!?って……楽しい😛

他人が期待する現実以外は仮に現実であってもフィクションになってしまうと云う現実……。

おそらく、こうした居心地の悪さを抱えている人は存外に多くいるんだろうななんて思う。

以下はレビューというより僕の独り言みたいなもので……。

LGBTQを差別してはいけないなんてのは当たり前のことだけれども、過度に「差別はやめよう」なんてムーブメントで、「あなたを差別するつもりはないのですが、あなたはLGBTQなんですね」なんて確認しているような事態にはなってないだろうか。

たぶん彼らは放っておいて欲しいだけなんじゃないのか。

前に、ロバート・キャンベルさんが、「自分は同性愛者だけれども、女性が女性を好きになる気持ちは全く理解できない」とおっしゃっていた。

この言葉は、僕にとっては結構転機になった。

分からないものは分からないのだ。

『罪悪感から逃れようとして』無理に理解しようとしたり、分かったふりをしないで、「そうした人」がいると認識して、放っておくだけで十分なのだ。

それが差別がないと云うことなのだ。

僕たちの「差別はやめよう」はいつのまにか偽善っぽくなってないだろうか。

こんなことを考え始めてから、僕はゲイの映画からは少し距離を置いていて、ラブストーリーは、自分の性的指向に合った男女のものを優先するようにしている。
その方がより気持ちが揺さぶられるような気がするからだ。

僕の想像だけれども、女性の間でBLもののマンガが人気があるのは、女性が美少年を好きだと云う単純な理由からだ。こうして今の若い子は、LGBTQを自然と理解するんじゃないのか。

昔、「西北西」というレズビアンを扱った映画を観て、女性が女性を人を好きになる瞬間は、僕が女性を好きになる瞬間と同じだと思った。

それで十分なのだ。

仮にもし僕が好きになった女性が、他に好きな人がいて、それが男性だろうと女性だろうと、僕にとっては同じ失恋なのだ。

人間は時々、いや、しょっちゅう、事を過度に複雑にしすぎる。

差別がないとは、もっとシンプルで、当事者じゃない他人が勝手に想像したり、期待している世界のちょっと外側にあるような気がする。

この「アメリカン・フィクション」に出てくるモンクのファミリーや仲間のあれやこれやは、白人やアジア人に置き換えても成立しそうな話が本当はほとんどなはずだ。

どこかに罪悪感を抱えた人に向けた作品を作ったところで変わらない現実もある。

変化が明らかになるまで、何らかのリーダーシップやトライ・アンド・エラーが必要であるのは認めるとしても、いつか人種だのジェンダーだの放っておける社会が来ると良いなと思う。

そんな社会はきっと居心地が良いに違いない。

まあ、今はトライ・アンド・エラーの『エラー』の真っ只中という感じで、居心地の良い未来はかなり先のことになりそうだって…、もしかしたら来ないかもしれない…なんて暗澹たる気持ちになることもあるけれどね。

「FUCK!」
ワンコ

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