ひすい

アメリカン・フィクションのひすいのレビュー・感想・評価

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)
3.7
スランプに陥ったインテリ純文学作家(黒人)が黒人のステレオタイプまみれのB級本を半分冗談で書いたらめちゃくちゃヒットしちゃったという話。

近年の映画、文学、あらゆるメディアのトレンドである “多様性”という半ば商業化している言葉に、当事者からの視点で切り込んでおり、皮肉すぎる展開に苦笑いしながら共感した。とは言っても描かれ方は非常にコミカル。バックに流れるジャズ音楽も出てくるインテリアもおしゃれで、程よく力が抜けているため気負わずに鑑賞できるのが良いところだった。ポリコレの嵐に辟易してきた今なら刺さる人が多くいるだろうと思う。

心揺さぶる作品としていかにリアルであるかが求められ、私たちもそれを求めている。しかし、所詮私たちがリアルで生々しいと感じるものは、現実の一部しか見聞きしたことがない乏しい経験を基に作り上げた想像の世界でしかないのではないか。私たちが多様性と呼ぶそれは、マイノリティにはこうあって欲しいという願望でしかないのではないか。という主張が痛いほど刺さった。

この問題を敢えてコテコテのフィクションで描いたのも皮肉めいていて面白い。

「真実ではなく、自分たちに罪悪感を与えてくれる免罪符を求めている」
これは白人だけでなく、あらゆる人に言えることだと思った。
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