tak

異人たちのtakのレビュー・感想・評価

異人たち(2023年製作の映画)
4.6
Pet Shop Boysの「Always on My Mind」はグザヴィエドランの「マティアス&マキシム」でハリスディキンソンがこの曲を聴きながらノリノリでエスカレーターから現れるという爆笑物のシーンに使われて以来、まともに聴くことができなかったが、ここまで涙を誘う使い方をするとは。

Generation Xのゲイ(1960年後半〜70年前半生まれ)の人々は思春期をAIDSパンデミック時に過ごし、自らのセクシュアリティに蓋をして今まで過ごしてきた人も多いだろう。絶対にこのような人は日本でもいる。対してGen Zのゲイは多様性が尊重され、同性愛者である事が当たり前の事として受け入れられる社会にはなったものの、やはりどうしようもない孤独感を持つわけでとりわけロンドンや東京のような大都会で生活すると、隣人は異邦人で関わらないというスタンスが大きい。だから夜な夜な出かけてはクラブで踊り明かしドラッグで孤独を紛らわせてるんだ。結局はみんなどこか孤独を抱えて生きている。

大林版も勿論心に響く内容だったが、今作は大林版にあった家族愛やノスタルジーよりかは、より都市部のゲイ、いや孤独な人々を優しく包み込むような優しい内容だったなと鑑賞から1週間経ったが余韻が日に日に増してくる感覚だ。

独り身で東京に住んでる私は、本を読んだり映画を夜な夜な観てはっと謂れのない孤独感に襲われる事がある。そんな時ふとタバコを吸いながら隣のアパートの一室がまだ灯りがついていると、安心感というか、同じように過ごしている人もいるのだなと暖かい気分になる。そんな映画だったなと、しみじみ思う。
tak

tak