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東京物語のtakのレビュー・感想・評価

東京物語(1953年製作の映画)
5.0
この映画を初めて観たのは自分が粋がってた19そこそこの時で、退屈だなと感じた。
実家に暮らして、大学生をしていた自分。
弟は高校生で家族なんているのは当たり前だった。

16年の時が経ち、気がつけば弟は家庭を持ち、両親は今年で70になり、自分自身もまさにこの映画の原節子のように東京のスカイツリーが目の前にあるマンションの一室で1人で暮らしている。弟には自分達の生活があり、両親と過ごせる時間は刻一刻と無くなっていくのが、身内が亡くなる事が多くなった今となっては、非常に身近に思えるようになった。そして今日再鑑賞した日は甥っ子の初めての端午の節句で両親と弟の家族そして独り身の私が集まってお祝いをした日だった。

とにかく喰らいまくって、こんな夜中の3時過ぎてるのに動悸がするほどクラクラしている。あまりにもリアルで人間の老い、家族関係、生きる死ぬ、そして時が止まってしまった人々の孤独感と目まぐるしく変わっていく人達とのディスコミュニケーション、脚本や演出どれをとってもこれ以上にないとも思えるし、私自身もどこかでこの台詞を聞いたことがある、もしくは発話した覚えがあるかもしれないという70年前というちょうど両親が生まれたから何一つ人間なんて変わっちゃいないと強く思った。

結局は戦争や大災害での断絶が無い限り、日本人の家族像というのはこの物語の繰り返しのようなもので、人間の人生は儚く映画のようなドラマは無いという徹底的に突き放した冷徹さも、非常に突き刺さる。

今こそ小津作品を再鑑賞しよう。
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