あおよ

異人たちのあおよのレビュー・感想・評価

異人たち(2023年製作の映画)
4.4

異人たち

時を超える傑作。

40歳の脚本家アダム。ロンドンで一人孤独を感じながら生活をしていました。ある日隣人のハリーという男性が訪問してきます。一緒に飲もうと誘われますがアダムは初対面と彼が酔っているようだったので静かにドアを閉めて断ります。
アダムは自分の過去の写真をあさります。30年前に死別した両親との写真を見つけ、アダムはもう一度実家に寄ってみることにします。すると、30年前と同じ見覚えのある両親の姿がありました。

アダムはゲイです。ハリーも。
監督、脚本を手掛けたアンドリューヘイ監督。アダムを演じたアンドリュースコット、両者とも実際にゲイを公表しています。
なので、監督も個人的な作品だと。そして感じる孤独や欲求、理想はよりリアルなものになっています。
この本作はアンドリューヘイ監督の集大成的な作品になっています。「ウィークエンド」「さざなみ」「荒野にて」では家族。同性愛。孤独。をそれぞれに感じさせられます。
この異人たちの原作は山田太一の日本小説(1987年)です。そして1988年に「異人たちとの夏」として映画化もされていました。原作と最も違う点は主人公が同性愛者ということ。
この作品自体異様な雰囲気が漂っているのですが、本作もまた景色の静かさや落ち着かない不安感などから「孤独感」を強調して感じられました。
ゲイであることを親に告げていなかったアダム、彼がずんと沈んで物静かな感情をうまく出せていないような表情をする人になってしまったのも両親など告白をできず、打ち解ける相手がいなかったからなんでしょうね。
過去の年代を生きていた両親にゲイだと告げるシーンでは過去のゲイに対するイメージをそのまま受け取られます。いじめられたりはしていなかった?子供は欲しくないの?など想像すればでてきそうな反応です。だからこそアダムの想像したものなのかなと思います。ハリーが同じマンションに2人だけでそしてゲイなのも都合が良すぎます。アダムの妄想なのかまたもや、アダムは死んでいてこれは走馬灯なのかとか色々考えられます。
構成は初めは理想的な関係性、そして少しずつ現実が見え始めます。ラストは一気に現実を叩きつけられます。
そのラストはハリー自身も亡くなっている亡き人物像だったということ。
この作品は死者と会話ができている、などのことが細かく解明されません。
時代の変化や経験の差などからの孤独、それを勝るのが理想とする愛である。 

洋題である「all of us strangers」は私たちは皆見知らぬ人々であって異人たちはみな見知らぬ人々であり、
皆が知らぬ人で孤独を感じるのは一人じゃないと言ってるみたいですね。
本作の家族やハリーはアダムの孤独感からなる妄想や理想だったのだろう。

今生きることにそして今ある愛に感謝したくなるし、生きることに必要なものを教えてくれる。そしてこの映画が必要なものになってくれる。寄り添ってくれる。
あおよ

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