kensyo

エイリアン3のkensyoのレビュー・感想・評価

エイリアン3(1992年製作の映画)
3.8
デイヴィッド・フィンチャー監督のデビュー作品!

史上最高額の制作費で監督デビューを果たした監督に「映画を撮るくらいなら大腸ガンになって死んだほうがマシだ!」と言わしめたほど難産だったとの事だけど、画の抑制された冷たい色調は既に監督のカラーとして完成されていて、各シーンがハッとするくらいに美しい。

1→2と、順調にエンターテイメントとして拡大路線になっていたのに対して、3では限定されたシチュエーションと、登場人物の文化的なバックボーンに厚みを持たせたアプローチになっていて、シリーズに新たな世界を与えていると思う。

エイリアンについても、宿主の形態を一部引き継ぐ、というアイデアが新しく、面白い。(「プロメテウス」以降では重要な要素になるし)

エイリアン視点でのカメラワークも面白く、シーンは本当に素晴らしいものが多い。

一方で、エイリアン自体の動きや映りは、1,2よりも明らかに不自然で画面の中で浮いているシーンも多い(「人型」以外のクリーチャーを自在に動き回らせるには、まだ映像技術が追いついていなかったんだと思う)。
そういう意味で、1,2よりも時代を感じさせる。

映像描写以外でも、エイリアンが単に「凶悪な人食い」として描かれていて(意外に、エイリアンが「食う」という描写は3にしかない)、ひどくあっさりとしていて薄い。

この点でも、監督はエイリアンをあくまで「人の物語」として描こうとしていたんじゃないかな、と思う。

終盤、物語のクライマックスに当たるシーンでは、建てられた作戦や状況が今ひとつ不明瞭で、登場人物が騒いでいる割に物語に入り込めないし、感情移入もしにくい。そのせいでカタルシスにも欠ける。
(主にそのせいで、3に関しては「完全版」よりも要素の少ない「劇場公開版」の方が個人的には好み。ちなみに完全場はエイリアンの宿主が全然異なるのだけれど、ここも劇場版の方が良い…)

それでも、「エイリアン」シリーズとして求められていた方向かどうかは別として、一つの映画として3は十分に魅力的だと思う。

何気にシリーズで唯一会社の上層部にあたる(と思われる)人物も出てくるし、結構重要な描写もある…気がする。

監督はこの作品で「大腸ガンで死んだほうがマシ」と言い放って、実際に以降一年半も脚本を読むことすらしなかったらしいけど、それで次に作るのが「セブン」というのがすごい…
kensyo

kensyo