やま

アタラント号のやまのレビュー・感想・評価

アタラント号(1934年製作の映画)
3.8
こういう物語が成立するのって現在じゃ難しいような気がする。そして同時に羨ましい。
今ってスマホ、snsの発展から遠くにいても近くにいるような感覚で、こまめに連絡を取っている相手なら実際にしばらく会っていなくて久しぶりに会っても、感動とかはない。ましてや今作のような2.3日会わないぐらいじゃ何とも思わないような気がする。

ストーリーはこれといって深みもなくつまらなくもなくシンプルなわけだが、「水の中で目を開けると好きな人が見える」というセリフが一種のテーマとなっており、なかなか面白いシーンが多い。

副船長や少年、猫たちのドタバタも楽しいんだけど、ちょっとしたいざこざから離れてしまった夫婦がそれでも互いを思い合っている様子が良い。あのカットバックは男女のモヤモヤしている感じを巧みに映してると思う。体を掻くあの感じ。

ちょっとで良いからSNSがない世の中を体験してみたい。
やま

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