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バティモン5 望まれざる者のワンコのレビュー・感想・評価

バティモン5 望まれざる者(2023年製作の映画)
5.0
【示唆したいもの/分断を食い止めるとは】

この作品「バティモン5」は思いがけず面白かった。

フランスでは昨年公開され、フランス国内映画を対象にしたセザール賞の多くを獲得し、アカデミー賞やゴールデングローブ賞の外国映画を対象にした賞にノミネートされていた作品だ。

先般、奇しくも、フランス領のニューカレドニアで暴動が起きた。
ナポレオン3世がフランス領に組み込んでから、フランス本国からの移住者の参政権を制限し、元からいる住民の半ば自治を認める制度に手を加えようとしたからなのだが、ニッケルの埋蔵量が多いことや観光資源、海洋資源が豊富という背景があるにしろ彼らのアイデンティティを刺激してしまったのだ。
直ちにフランス政府は暴動の沈静化をはかったが、潜在的反政府姿勢を鑑みて、マクロン大統領がニューカレドニアに直接赴き、制度改革は急がない意向を現地で表明することになった。
失政だ。

この「バティモン5」にも新たに市長となったピエールや、ロジェの成果を急ぐあまり強硬な政策が目立つようになり不穏な空気が広がっていく。

パリのオリンピック開催を前に再開発で揺れるパリの状況を背景に、どのように政府が政策を強行し分断が広がるのか、そしてこれをおさめる方法があるのかを問うている気がする。

(以下ネタバレ)

ヒントは、アビーがブラズを置いて去る最後の場面だ。

マクロン大統領が譲歩したように、対立する側も先鋭化を防がなくてはならない。

政府と市民の側両方が譲歩して初めて分断は防げるのだと言っているような気がする。

上映館は例によって多くはないけれども興味のある人は是非。

上映館が少ないのは日本の映画業界も思考停止してるんだろうなと思ったりする。まあ、そんな評論家も多いしね…。
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