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バティモン5 望まれざる者のオロゴンのレビュー・感想・評価

バティモン5 望まれざる者(2023年製作の映画)
4.7
面白い!
社会は組織として倫理を見失いますが、尊厳を踏みにじられた怒りに暴走する個人は良心によって暴力の手を止めることができる。ラストの主人公の行動と顔に、人間個人の希望を見ます。
現代を劇として正統に構築しながら社会問題も分かりやすく炙り出される素晴らしい作品です。

外出禁止令の中、集団で歩くアビーらとそれを止めようとする警察官らが対峙する場面。
市長選に出ると宣言した主人公を応援するため「アビー!アビー」と声が上がりますが、その声のリズムと呼応するように警察車両の青いランプが点滅します。権力のための装置が、映画の演出を通して自由の側に輝く芸術にひっくり返るあまりにも美しい瞬間に感動します。

映画はビル倒壊のスペクタクルで始まりますが、その爆破音で市長は心臓麻痺を起こすという社会のグダグダぶりもおかしく、映画が虚構の芸術として現実に抵抗する演出思想に深く信頼に念を抱きます。
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