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バティモン5 望まれざる者のどど丼のレビュー・感想・評価

バティモン5 望まれざる者(2023年製作の映画)
4.0
ラジ・リ監督待望の新作。フランス社会の暗部にフォーカスした作風は「レ・ミゼラブル」「アテナ」と共通しているが、彼らが生きてきた社会の不条理さをスリリングな長回しアクションを始めとしたケレン味成分の多用で見せていた前2作と比べると、比較的社会派要素の描写に力を入れ、フランスの一地域における共同体内外の対立構造をより明確化させた印象がある。

衝撃度で言えば前作に劣るかもしれないが、そこは監督が製作で携わった「アテナ」で批判された政治性の欠如を補完したい目的があったのかもしれない。政治性と過激性のバランス配分で見ると「レ・ミゼラブル」はやはり秀逸だったなとも思いつつ、この手の作品が当事者の手によって定期的に製作される事には大きな価値があるので、今回も劇場で観ることが出来てよかった。

本作の世界と出来事も、現代の「関心領域」の一つだよな……。移民の受け入れに反発する人も多い日本の観客が、彼らに対してさらに悪い印象を持ってしまわないかという不安も感じたが、少なくとも自分は終盤のアビーの行動に希望を感じ取れたと思う。
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