YasuhiroHorie

バティモン5 望まれざる者のYasuhiroHorieのレビュー・感想・評価

バティモン5 望まれざる者(2023年製作の映画)
4.6
パリ近郊の団地の話であるけれど、鑑賞中に頭に浮かんでくるのは、自分の身の回りで起きている事柄や生きている人たちのことだと思います。それくらい世界は同じ問題を抱えているんだな。

この日本でも、なんかわからん陰湿な身内びいきくらいに堕ちたナショナリズムによって、匿名有名の有象無象が想像上のクルドやら在日コリアンやらアイヌやらを攻撃するのを見かけるのが日常になってしまっているけれども、ああ、フランスもそうなのか、っていうかいま人類全体の問題なのかってことに気づきます。

後半の怒濤の展開、これを見てもお前らは何も感じないか、動かないか、これでもか、これでも他人事か…ってシーンの連続があります。そんな中、いつもは映画を観ている最中に泣いたり怒ったり(笑うはある)の感情を外に出すことはないのですが、市長のあるセリフを聞いた瞬間、反射的に劇場に響き渡る音量の舌打ちをしてしまったってのは初めての経験で、自分でもびっくりしちゃいましたね。それくらい強い映像によるメッセージ、さすがは激しいケン・ローチ(勝手な呼称)。

ともあれこれは現代社会に生きる人類必見の一本、「人を侮辱し続けるとどうなるか思い知」り、それでも点かなかった火や握られた手について考えたいものですね。
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