3029th

わたくしどもは。の3029thのレビュー・感想・評価

わたくしどもは。(2023年製作の映画)
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まるで現代版小津映画。

佐渡島の自然と被写体を信じているからこその、ほぼフィックス、見せたいものを画面中心に持ってくる3:4のシンプルなカメラワークに、自然と調和するアースカラーの衣装。

朴訥とした台詞回しが今はもういない往年のスターと重なり、この世ならざる者を表現する。
映画ファンにはたまらない作品だった。

自然と調和し、そこにいるだけで画になるキャスティングも素晴らしくて。
思えば昔の映画に音はなく、佇まいに雰囲気がある人がスターだった。
この映画に出ている俳優たちは、そんなタイプの方たち。

監督と脚本は夫が、プロデュースとキャスティングは妻が行っているというクリエイター夫婦らしいのだが、こんな素敵な映画をつくるカップルがいたのだと初めて知った。

最近、あえて白黒で撮られた映画やドラマをいくつか観ていて、それはそれで細部の装飾の美しさに目がいったり、古き良き感が出て良い。

この作品は古き良き様式美を踏襲しつつ、佐渡島の自然と溶け込むようなカラーリングの衣装で画面をワントーンに抑え、"ミドリ"と反対色の、生を思わせる赤をピリリと効かせる。

とてもシンプルなつくり、魂や霊といった日本古来的テーマを扱いつつも、とても緻密に練られた作品だな、と思いました。
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