ヘソの曲り角

ありふれた教室のヘソの曲り角のレビュー・感想・評価

ありふれた教室(2023年製作の映画)
1.5
クソ。けっこうちゃんとしてそうな風格があったり学校を舞台にした社会派ドラマってよりかはサスペンス風味が強かったりで途中まで「これからどうなるんだろう…」とワクワクしながら見ていたのだが保護者会のシーンで化けの皮が剥がれてそれまでの場面も酷い点が多々あることに気づき、それ以降最後までいいと思えなかった。そもそも閉塞感演出のために安易にスタンダードサイズにしてる時点でこの作品の薄っぺらさに気づくべきだった。

出てくる人が尽くバカすぎる。全部をその場で即断して対応をミスるという初歩的な間違いが多すぎる。前半部で教室での盗難事件と職員室での金銭の窃盗が並行して描かれるのだがこの2つの窃盗事件を勝手に同一犯と結びつける幼稚なキャラが多すぎる。2つの事件をどう解決するかじゃなくて愚かな人間たちの悲劇を見せられることになるのだが1ミリも面白くない。

なぜなら、多くの局面でちゃんと文脈の渋滞を解消できるタイミングがあるにも関わらず作劇の都合で会話が中途で放棄されて次の場面に移ってしまうからだ。聞く耳を持たないキャラもいることはいるがそれ以前に「ここでちゃんと話し合われると物語が終わるからやめておこう」という脚本の意図が透けて見えた。文脈の取り違えが深刻になる保護者会のシーンも、あの時全部説明すれば後半の騒ぎにはならない。敢えて主人公に混乱させてトイレで過呼吸にさせている。ここが大いなる過ちだ。稚拙な作劇によって見せかけの露悪性、性悪説、不寛容を見せられたところで何にも面白くない。よしんばそれを描けたところでそこから先我々がその障壁に対しどう向き合うかの考えを表明しなければ面白くなりようがないと思うのだ(私が人間に期待しすぎていることは百も承知だが)。映画には「悲劇」が多い。悲劇にすればウケがいいから。こんなものありがたがっているようでは作る側の意識も当然低くなる。

ラストも最悪としか言いようがない。物語すらも中途で放棄してしまうのだ。覚悟がない。落としどころとしてもまるで納得がいかない。色々「考察」なりなんなりすれば真犯人とかそんなくだらないことが分かってオスカーが玉座に鎮座しているようなラストも納得いくのかもしれないが、それ以前の問題である。作家としての意識が極めて稚拙。大仰なクラシック音楽もうざったい。

褒められるのは繊細な名演を披露した生徒たちだけである。