ゆうゆ

ありふれた教室のゆうゆのレビュー・感想・評価

ありふれた教室(2023年製作の映画)
4.6

校内で頻発する窃盗事件の犯人を捜すため起こしたアクションによって理不尽な鉄拳制裁をくらい追い詰められていく、女教師目線で描かれる正義の崩壊

隙間ない緊張感に拘束され続ける息もできない地獄の99分。
年齢も国籍も言語 思想も混在する閉塞的な社会縮図の中で空回りし続ける正義の果てに嵌る思いもよらない落とし穴。CO2を吸い込み誰かのぬくもりを欲し大声で鬱憤を吐き出さないと平静すら保てない "ありふれた" 日常の皮肉と共感性、生徒 同僚 保護者達からの利己的な主張に晒されながらも最後まで真摯に寄り添うヒロインの陥る苦悩を見事に体感させる演出と脚本には恐怖とは別の高揚感を覚えた。

個々のちぐはぐなパーツが集まり多面的な彩りで形成されたキューブ(世界)は幾多の法則によってその色を善にも悪にも統制できる可能性を秘める。数学や体育の授業で理論的に答えを導いてきた生徒が獲得した立方パズルのアルゴリズム、対峙するふたりの内面的な優劣を示唆する周到なラストのシークエンスまで 終始隙のない演出に痺れる

⭐️

「落下の解剖学」では完全に視聴者に委ねられた犯人像は今作ではどう考えても明確! なので主張ありきで その証明が許されない展開にかなりもやもや。相手がみな悪いことしても 誰ひとり非を認めるどころか、悪びれず理詰めで反撃する姿勢には怒りを通り越して目眩を覚える

教師に限らず、理想を持って仕事に臨む新人さんが職場の理不尽に打ちのめされて疲弊し、事勿れ主義に流され周りに同化してく現実が頭をよぎった。彼女は違うと思うけど。
ゆうゆ

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