ノラネコの呑んで観るシネマ

ありふれた教室のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

ありふれた教室(2023年製作の映画)
4.5
なかなかに興味深い、集団心理劇。
舞台は、盗難事件が頻発しているドイツの学校。
移民の生徒が疑われ、ギスギスした雰囲気になっている所に、主人公の教師がパソコンの録画機能で犯罪の瞬間を撮影する。
それによりある職員に嫌疑がかけられるのだが、主人公は職員の子の担任でもある。
生徒たち、教師たち、職員たち、親たち、複雑に入り組んだ人間関係の葛藤によって、小さなコミュニティは疑心暗鬼から相互不信に陥り、急速に崩壊してゆく。
主人公の撮影した証拠は決定的なものではなく、彼女はいつしか、自分の告発が正しかったのかも分からなくなる。
私も一応教育者の端くれなので、このちょっとしたことから教師と生徒の信頼関係が崩れてしまうシチュエーションはよく分かる。
一度壊れた関係は、往々にして負のスパイラルに落ち込み、簡単には修復出来ない。
校長先生が自信満々で「私に任せなさい」って言ってるのに、全然ダメダメなのが草。
彼女を含め、教師たちがみんなどの学校にも一人はいるタイプで、どうやら国が違っても人間はだいたい同じらしくて可笑しい。
劇中で主人公が、問題を解決するための手順や方法を意味する「アルゴリズム」を説明するのに、ある小道具を持ってくるのだが、これの使い方が実に上手くて、生徒から「さあ大人でしょ、どう解決するの?」と問われる様な作品だった。
うーん、これは難問だ。
身も蓋もないことを言うと、個人的にはこう言う問題は自分たちで解決しようとせず、収拾がつかなくなる前に第三者機関(この場合は警察)の委ねてしまうのが一番いいと思う。
教師は警官でも探偵でもないから、そもそも犯罪の解決能力を持っていない。