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ありふれた教室のプライのレビュー・感想・評価

ありふれた教室(2023年製作の映画)
4.8
凄い作品。学校を世界に見立て、社会の縮図を幅広く表現した凄い作品。校内で起きた盗難事件を皮切りに、組織、聴衆、メディアといった社会を構成する要素が普遍的に集約されている。学校を舞台に設定するだけで社会的要素をこれだけ盛り込めることを知らしめた本作のストーリーテリングには唸るばかり。社会を学ぶなら、これ一本といった作品。学校が舞台だけに、子供の社会勉強にも使えて教育的。あと、弦の音が響くBGMの助力もあってエンタメ性も高い。もし、私が映画制作してる立場だったら、本作を作り上げた制作陣に嫉妬していた。

社会的要素の描き方について、物語の流れに乗りながら自然に表現されている。主人公の教師と校長をはじめとする上層部の上下関係と、主人公の教師と生徒たちによる中間管理職と現場労働者のような関係は組織で起こり得る、組織という1つの生き物の普遍性が詰まっている。さらに、生徒・生徒の保護者・盗難事件に無関係な教師が、感性的な意見や決め付けをする姿勢は伝聞を鵜呑みにする聴衆の普遍性が現れている。メディアの描き方には「その手があったか!」と驚くほど着眼点が素晴らしい。本作には校内関係者しか登場せず、新聞も雑誌もテレビ局も姿を見せない。インターネットも使用しない。だが、それでもメディアの普遍性を映し、事件当事者たちが世論(本作では校内までの範囲だけど)に呑まれる様相を見事に表現している。


⭐評価
脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐⭐
演出・映像   :⭐⭐⭐⭐⭐
登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐
設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐⭐
星の総数    :計19個
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