キヲシ

清作の妻のキヲシのレビュー・感想・評価

清作の妻(1965年製作の映画)
3.8
もしかして若尾文子の最高傑作?まあ大して数見てないけれど、振り幅があり過ぎる。心配する母親をよそに不貞腐れる表情、山の中で清作こと田村高廣を待つ立ち姿、独りになる不安を訴える声、嫌われている清作の母親に哀願する姿、戦場で負傷し帰郷した清作との一夜に見せる妖しい背中、思い詰めた瞳…。しかし、見ててきつい苦しい辛い。殿山泰司のぽてっとした腹以外は。空や天井が映り込まないアングルや、清作が迎えられ見送られる村境の橋が閉塞感を際立たせる。捕まっては逃げる若尾、大勢が追いかけ、とうとう押さえつけられ殴られ、露わになる太腿、縛られ引き立てられていく。大蛇のような鎖が恐ろしい。そして、ミニマムなテーマ曲が繰り返される。うあああ、世界は過酷だが土を耕し生きていく…。なんというか、聖書に書かれた清作とその妻の物語、という感がある。妾だなんだと罵倒し、旗を振り万歳三唱した挙げ句酔って「死んでこい」などと言い募る…我々がここにはいる。
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