小林且弥監督作品。初長編映画とのこと。監督と俳優の足立智充氏の舞台挨拶付き上映回を鑑賞。
東日本大震災後の福島の港町で散骨業を営む井口は、持ち込まれた遺骨が連続殺人犯のものであったことから、SNSや周囲からバッシングを受ける。
静かだが力強い井口を静岡出身のピエール瀧が好演。監督曰く"受けの演技"ながら、やはりインパクトがある。佇んでいるだけで絵になる。
そして、同じく静岡出身の足立智充氏が、井口と対峙するジャーナリスト江田をこちらも熱演。彼の正義はいわゆる世間の無責任なバッシング。彼が震災被害者だったらきっと違う伝え方があったのだろう。
外部からの"震災を風化させるな"という声。しかし、家族を失った当事者の中には、それは違うという本音もあるとのこと。井口の言葉が代弁しているとおり。
散骨業を知ることができた。先日観たリリー・フランキーの「コットンテール」では、夫がイギリスの湖に遺灰を撒くというシーンがあったが、本作では、袋に入れたまま海へ投げられるところがイメージと違った。
因みに、役者小林且弥とピエール瀧の共演作品「凶悪」では、リリー・フランキーもなかなかの役で出演している。
今の時代らしい世間の声。こうなりがちとは思うが、何か非難の方向が違うような気がした。それも監督の狙いどおりか。
だらしない部分もある父を支えてきた娘。母を失った娘の気持ちとも対峙する父。それでも父娘の愛情がとても感じられた。
日の出前の水平線を見つめる井口。深い悲しみを抱えながら、自らの信念で生きていこうとする姿が印象的だった。