上原正祐

黒衣人の上原正祐のネタバレレビュー・内容・結末

黒衣人(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

@フィルメックス

 何故か、日本には裸芸というか、裸の芸人がたくさんいるわけだけど、誇張無しに、お爺さんの全裸をただただマジマジと、60分間見せられたの初めての経験だった。歴史の痛み、肉体と精神の牢獄としての劇場。インタビューをかき消すような音楽。
 久しぶりにキャロリーヌ・シャプティエ芸としかいいようがない、舐め回すような緊張感に満ちたロングショットに感動した、ただ老いたお爺さんの鍛えられてもない裸を陰影を強調し、彫刻のようなある種の美しさとして昇華していく。
 王兵の作品では『鳳鳴』がユスターシュを明らかに意識したような作りだが、本作はそれでいえば、カラックス、ドゥニ、ドワイヨンみたいな、剥き出しの身体性。
 映画史的にいえば、すっかりスマホ時代になり、すっかり、意識さえされなくなってきた、90年代の映画っぽい肉体性というか、デジタルに対しての肉体性の回帰を、20年代になってあえて更に回帰のようにして本作はあると思う。
 あと、被写体のワン・シーリンの名前で検索すると、しっかり服着てインタビュー受けているのを見れる。改めて本作の異様さを図れる。
上原正祐

上原正祐