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GIFTのauchanのレビュー・感想・評価

GIFT(2023年製作の映画)
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映像も演奏も無声映画の伴奏付き上映の形式を踏襲したもの。概観するとこの興行は現代映画の語りにおいてこの形式が可能かを試すものといえ、そのように観てしまうと、そこでの一回性や即興性を今更騒ぎ立てることに意味はないように思える。形式を翻案し、復活させる実験として体験する楽しみはある。アフタートークから、作り手は楽しそうである。物語と映像と演奏の三つの項が流動的に関連し合うという経験は確かにこの興行の核であろう。基本的に音楽がフォローするのは物語であり、キャンピング事業が中心となる物語の複雑な語りと共に演奏の持つ膨大な情報量が重なる点においてその面白みが発見されるだろう。だが、複雑な物語を無声映画のタイトル形式に処理しきれいているか怪しく、先に述べた通り演奏の構成もシークエンスに合わせたテーマを用意するといったものでフォーマットへの甘えが見える。音楽と映像のリンクについても、形式上生じてしまうタイトルの間の、意味の付与されない宙吊りの時間に委任されており、形式への依存といえる。撮影が甘く、画面自体には特に豊かさもなく、運動にも貧しいこともこのような事態の要因の一つであり、また、宙吊りの時間において音楽が膨大な情報量で気まぐれの演出を加えることにより、その危うい映像を暴走させる瞬間があることも致命的である。

どうあれ1番の問題はこの形式に対する価格設定であり、その設定はブルジョアに囲われた新進気鋭の感じすらする。
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