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罪と悪のプライのレビュー・感想・評価

罪と悪(2024年製作の映画)
3.5
中学時代に同級生を殺害した男を殺害してしまった過去を持つ者たちが20年の時を経て再会した直後、20年前と同様に中学生が殺害される事件が発生したことで、真相と自分たちの罪悪と向き合うノワール・ミステリー&ドラマ。

罪悪に向き合うとは何たるかを散りばめた物語は哲学的であり、同時に、本作が監督デビュー作となる齊藤勇起監督のカラーと展望が見える。演出と物語は荒削りだが、俳優陣の演技が光る。

本作は、罪悪を犯す者と取り締まる者から、罪悪との向き合いを映した哲学的な作品。悪意のなさ故に正当化する罪。悪事と認めながらも罪に問わないor問われないことで成り立つ治安。法に則り、一線を越えた罪悪を全て照らせば関係者全員が報われるわけではないし、無関係の人々に何の得があるのか再認識させられる。何よりも1番は当事者たちの折り合いだと思ったところ。

監督を務めた齊藤勇起さんは本作が監督デビュー作。加えて、齊藤さん自身のオリジナル脚本。本作において、鑑賞後に正解を即答できないほど難しいテーマを扱ったり、北野武監督や吉田恵輔監督のようにシリアスな雰囲気にも関わらずスルッとユーモアを導入したりと齊藤監督自身のカラーや次作以降で取り組みたい展望が見えたような気がした。取り扱うテーマとユーモアの入れ方という観点から次回作も観たい。多少、荒削りや詰め込み過ぎがあったけど、齊藤さんの監督作が何本か世に出た後、本作を観返して「デビュー作って、その人のやりたいこと全てが詰まってるよね〜」となることを願いたいところ。

俳優陣の演技が光る。中学時代に殺人を犯した男たちを演じた高良健吾さん、大東駿介さん、石田卓也さんからは消せない過去を背負って生き続ける葛藤が滲み出ている。椎名桔平さん演じる、悪人を飼い慣らす刑事からは『孤狼の血』の役所広司さん演じた刑事・大上への挑戦状が見えたり。特別出演となった佐藤浩市さんは大御所らしく、わずか数分足らずの出番で存在感を残している。

惜しかった箇所は、音声と物語。録音の調子がイマイチだったのか聴き取りにくいセリフが何箇所もある。事件被害者の母のセリフに至っては、途中で音声が一瞬だけ小さくなっていたような気がする。総じてセリフが聴き取りにくいので、気を張らないと会話に置いていかれる。物語に関して、事件の真相の持って行き方について、ヒントから真実に行き着くまでの段階がほぼワンステップであり、興味が沸いたところで肩透かしを喰らう。また、実は伏線だったところも、前述の音声の聴き取りにくさが相まって印象に残らず、真相を知った時に驚きが減少している。1番目の事件において、主人公たちが犯人だと断定した男の印象が薄い。実物が登場するまで主人公たちの会話でしか存在を語られない上、その会話も長回しのワンシーンのみで人物像の把握が難しい。しかも、そのシーンに関して、これまた前述の音声の聴き取りにくさがある。印象が残らないまま変質者扱いされ、なんか犯人に決めつけられた感があった。あと、主人公たちは自分たちの生まれ故郷を口々に非難するけど、そもそも町の様子があまり説明されてないので、町の悪さがいまひとつ分からない。


⭐評価
脚本・ストーリー:⭐⭐⭐
演出・映像   :⭐⭐⭐
登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐
設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐
星の総数    :計14個
プライ

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