kouheikoizumi

ニューヨーク・オールド・アパートメントのkouheikoizumiのレビュー・感想・評価

3.0
NO2024003
ペルーからの不法滞在家族、母ラファエラと2人の息子ポールとテイト。ラファエラはレストランでウエイトレスとして働き、息子たちはウーバーイーツのデリバリー。この年の近い兄弟が移民用の英語学校で、クリスティン(タラ・サラー)という美しい女性と出会うことでお話が動き出す。
思春期の兄弟はクリスティンの魅力にメロメロとなり、一方、母親はエワルドというポルノ作家にほだされてブリトーの店を出すまでに。

舞台はニューヨーク、周囲から蔑まれ、存在そのものを無視されていると感じる移民の生態に迫る作品だが、主人公たちは健気に前向きに生きている。特に少年たちはクリスティンの美しさにドキドキしながら笑顔を絶やさず毎日を過ごしているので、彼女の視覚的な美しさとも相まって画面は明るい雰囲気を保っている。

謎の美女クリスティンが、実は高級コールガールだったという設定には頷かされるものがあるが、彼女もまた恋人の出所を待ちながら、高慢な客を相手に孤独で惨めな日々を過ごしていたことがわかる。そしてクリスティンは2人に筆おろしを施した後、恋人と思っていた男が妻帯者だったと知りその復讐に赴くことになる。

スイス出身のマーク・ウィルキンズは、瑞々しいカメラでニューヨークの町を切り取り、軽快な背景音楽を加えることで、えてしてお先真っ暗になりそうなお話に恋の予感も漂わせポップなイメージを与えている。

ラスト、ペルーに強制送還された兄弟がニューヨークの母親に電話をかけ、再び母の元に戻ることを約束する姿に、万国共通の家族愛が漂い前向きな救いがある。タラ・サリーの金髪で濃い美しさが忘れられない印象を残す。
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