あ

青春のあのレビュー・感想・評価

青春(2023年製作の映画)
4.7
「誰もいなかったよね?」
「こんな夜更けに誰も出歩いてないよ」
高層階のベランダからでけぇゴミ投げ捨てるシーンがあまりにもギャンブルすぎて面白かったです。

5年の歳月をかけただけあって、青春→倦怠の→の部分が可視化されていました。それで、→の部分を、最初一番華奢で子供っぽかったのに、凄まじい速度でスレて老け込んだシャオウェイに集約して見せたのが素晴らしかったです。

普遍的に生活がマンネリ化していって青春が静かに終わっていくのですが、非常に人工的な工場のそれぞれにしっかりと独特な毛色があって、余りにも水と油な人間関係がそこにあるのに、決してディスコミュニケーションにならないからこそ、この人たちは故郷を見失わないんだなと思わされるものがありました。

たまたまアントニオーニの「赤い砂漠」の次に見たので、本作の工業地帯の決定的な幸福さは、何も変えたり捨てたりしなくてもいいところにあるんじゃないかと思いました。

ただ一方で、このコミュニティのどこかにはまだ座敷牢とかがあるのではないかという怖さもありました。差異はあれど、皆自分なりの居場所を持ちすぎている分、ずっとニヤニヤしていてろくに仕事もできず、すぐクビになったという新人のその後が気になりました。かなりの頻度で顔ぶれが変わるのも不穏でした。

この映画に映らなかった人たちを目ざとく拾い上げているのがジャ・ジャンクーなのかと思いました。
あ