自己中心的で攻撃的な、でも魅力的な男性に人生を振り回された母子の40年間を描いた、カトリーヌ・コルシニ監督のドラマ映画。原作は、フランスの作家クリスティン・アンゴットの同名小説。

主人公の女性ラシェルは、魅力的な男性フィリップに出会って恋に落ち、相思相愛の関係になる。一方で、フィリップは誰にも縛られずに自由に生きたいという主義なので結婚は出来ないとラシェルに告げる。それでも二人の間に娘シャンタルが生まれ、フィリップの考えを尊重するラシェルは、結婚は望まないが娘を認知するように頼むが、良い返事が得られない。そのうちに、フィリップはある女性と結婚したいとラシェルに打ち明けるが、それが母娘の受難の始まりとなる。

また一つ、素晴らしい映画に出会えたというのが、率直な感想。ストーリーが首尾一貫していて、完成度がとても高い。ひどい父親を嫌いながらも、娘の性格もどこか似てしまうといった、細かい部分まできちんと描かれているのもグッド。日本では未公開のようだが、ぜひ公開してほしい。

ラシェルを演じたヴィルジニー・エフィラの演技が称賛すべきレベルである。若い頃のシーンはちょっと年齢的が厳しい気もするが、それでも魅力的な女性であることが十分に伝わってくる。彼女の出演作は今までも何作か見ているはずだが、ほとんど彼女の印象は残っていないのに対して、この映画の彼女は本当に魅力的でファンになってしまった。最近続けて出演作を見ているニールス・シュネデールの、ひどい男っぷりもなかなか良い。

ヴィルジニー・エフィラの、ニールズ・シュネデールとのラブシーンでの感情表現がかなりリアルで、それを見て二人は実際に付き合っているかと思うほどだったが、実生活でも付き合っていて、現在もパートナーであることを鑑賞後に知って大いに納得。二人は本作での共演がきっかけで付き合うようになったとのこと。一目惚れだったが、現場では二人は一言も言葉をかわさなかったので、スタッフからは二人は嫌い合っていると思われていたと、ニールズ・シュネデールはインタビューで述べている。

実は、本映画の原作は自伝小説（娘のシャンタルが著者のクリスティン・アンゴットをモデルにしている）である。映画の中でも娘のシャンタルがナレーション役となっているが、その声はシャンタルを演じた俳優ではなく、クリスティン・アンゴット本人である。それを知って、ちょっと気分が重くなってしまった。

（カナダ滞在中に Tubi にて鑑賞）