ブラックユーモアホフマン

パーマネント・バケーションのブラックユーモアホフマンのレビュー・感想・評価

4.2
22/02/09
今の気分にしっくり来た。
内容を理解しようとするとかじゃなく肌で感じるのが正しい見方なこんな映画が。

最近あんまり映画館で映画を観る気になれてなかったけど無理して行って良かった。
けど結構寝ちゃった気がするので明日また観る。

22/02/10
眠気を誘う。これは寝ちゃってもしょうがない。

現実に鳴っている音なのか、それとも彼の頭の中だけで響いている音なのか分からないけど、ずっと教会の鐘の音のようなものが聞こえる。
途中、爆撃機のような音も聞こえるけどこれも現実の音なのかどうか。タル・ベーラの『サタンタンゴ』やタルコフスキーの『サクリファイス』を思い出した。

荒れ果てた街ごと病気にかかったような都市の撮り方は、ロッセリーニの『ドイツ零年』すら思い出す荒みきり方だった。

同時にヌーヴェルヴァーグっぽさも感じる。ゴダールやトリュフォーのような。一見、脈絡のないシークエンスの連なり。映画で遊んでいるような。

でも実は構成はかなり理性的に理解できるように作られている。めちゃくちゃなようで意外と常識的。
中盤、映画館で出会う黒人の男性が話す”ドップラー効果”のジョークが全体を貫くモチーフになっていて、最後、病んだ都市マンハッタンから遠ざかるにつれて、Over the Rainbowのフレーズがドップラー効果のように次第に音程が上がっていって終わる。詩的で美しい終わり方だと思った。

「ここからここの話」という冒頭の語りの通り、パーカー青年は部屋から出て部屋に戻り、最後NYから出てパリを目指すが、恐らくジョークの通り、パリに行ったところで”ここ”と何も変わらないんだろう。ここではないどこかを求めて彷徨っても結局また”ここ”に戻ってきてしまう、というテーマはケリー・ライカートの作品にも通ずる気がした。

船に乗る前、パリから来たという自分によく似た青年と出会いすれ違うシーン、束の間友情のようなものが生まれるもすぐに別れてしまう刹那的な瞬間は、『ダウン・バイ・ロー』の3人にも通ずる情緒だと思う。

【一番好きなシーン】
ジョン・ルーリーが吹くサックスの音を聞きながら夜の闇に歩き消えて行くパーカー。