じゅげむ

パーマネント・バケーションのじゅげむのレビュー・感想・評価

4.0
孤独を濃縮 虚無にここまで向き合うのは苦しい

前半かなり退屈だったので
雰囲気お洒落映画とこき落としてやろうと思っていた

もう一度言うけど入り込むまでがめちゃくちゃ退屈です 最後まで観れるか不安でした 映画が進むうちに思うのです これは発狂するまでのカウントダウン?

終始流れる聞いてて気持ちよくならないタイプの民族的な音楽 寂しげな抑えめの色彩 海さえ徹底的に色褪せてみえる 色のない音と色のない景色の融合 ありそうで無かったので新鮮でした 適当な良い音をかけてりゃもっと感動を誘えた所を この珍妙な音にしちゃうの凄いよね どうやっても安いエモいになりそうなシーンでも変な音を流し続けるので安い涙も流れなかった だってあの音は彼の心の音色だからね 突然美しいブルースにはならないよな 素敵

主人公の心に流れるあの変な音楽は 荒廃的な街の景色とマッチしてません 己を見失いながら表現を諦めない路上演奏者の『虹の彼方に』は色のないNYと不思議と合致してる 気狂いになってしまった人達のほうが NYに溶け込んでいて 彼のほうが浮いて居ます

サビから永遠に進めない『虹の彼方に』と主人公の心情を表した民族音楽は街を離れても交わらないけど 喧嘩もしないし途絶えることもなく 聞いてて不快じゃない むしろ落ち着く不思議(不思議って何回言うんだろう)

街が遠くなるほどサックスの演奏が高貴なJAZZに聞こえてきたのはドップラー効果だったのでしょうか

寂しい余韻

結果彼は狂わなかった 狂えなかったというか 完全に狂うほどの愛も憎しみも最初からおそらく持ってない 己を失って完全に違う世界に行けたら自分を見失えたら楽なんじゃないかと私はたまに考えてしまう

映画の技術 細かいことは解らないど 素人の私からするとめちゃくちゃ人生に疲れた玄人が作った暗く悲しい映画 若くキラキラした時代に 長篇一作目でこれを撮ろうとした精神性に惹かれました 凄い

10代でこの寂しさを知り 理解する人も居れば卒寿を迎えてもこの寂しさが理解できないという人が居ると思う 生涯知らなくて済むなら知らないほうがいいとさえ思う 眠くなって寝ちまえる人のほうが長生きするぜ🙂

ど失礼な偏見ですがこの映画が刺さる人は
ややこしい癖がありそうです

オムニバス形式で最後に出会う巴里個人主義系イケメンと主人公

一番似ていて 挨拶を交わし軽く談笑も出来る しかし共に生きることは出来ない

言葉にならない痛みを分け合うことも難しい

この寂しさを分け合うことが出来るのなら この寂しさをそもそも知らない気がする
(上手く言えない…)

確かにこの映画はスタイリッシュでお洒落だけど それだけではないのです

あえて細かく瑞々しい所をあげるなら 同じ場所に留まれない 旅してる間だけ孤独から逃げられる的な台詞は青いかも いつか変わらない何かを見つけることを誰よりも強く願うから旅をするんじゃないかね 旅って大変だよ

監督はこの孤独に超早熟で折り合いを付けたというか 最初にこれ撮ったらもう怖いもんないよねって話で こんなの若いうちに撮ったら発狂して狂っちまうと思う 天才of天才

私はこの映画から色をあまり感じなかったよ
先述した台詞くらい 後は全て白黒

入り込めなかった前半をもっかい観ます🙋‍♀️
じゅげむ

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