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バッドランド・ハンターズのプライのレビュー・感想・評価

バッドランド・ハンターズ(2024年製作の映画)
3.8
『コンクリート・ユートピア』と世界線が同じ作品。大災害に見舞われて壊滅的となった韓国・ソウルにて、青年とマ・ドンソク扮する巨漢の男が1人の少女を救出に向かうサバイバル・スリラー・アクション。

本作も『コンクリート・ユートピア』と同様、極限状態に陥った人間が良心を放棄して狂気に染まる様を描き、それに対して如何なる時も良心を捨てないようにと心意気を語る作品になっている。だが、アプローチは全く違う。『コンクリート・ユートピア』は心理的および精神的に描いていたのに対し、本作は物理的およびSFを用いて描いている。『コンクリート・ユートピア』の人間たちの生存本能は『ミスト』や『福田村事件』に近い心理描写だったが、本作で描かれる生存本能はゲームや漫画の設定に近い。ノリ的には「俺は人間を辞めるぞー!ジョジョー!!」である。これだけの振れ幅が可能であれば、『コンクリート・ユートピア』をパターンA、本作をパターンBとして、今後も新たなパターンで世界観の膨らみが期待できる。

『コンクリート・ユートピア』がドラマ主体だったのに対し、本作の主体はアクション。アクションに関しては、相変わらずマ・ドンソクが登場するだけあって圧巻の無双アクション。刃物でブッタ斬る。銃をブッ放す。拳でブン殴る。人体欠損に容赦がなく、逐一、マ・ドンソクがド派手に決めて爽快。しかし、カット割が多過ぎ&カメラがブレ過ぎという問題のダブルパンチで見づらい。それなのに、アクションの芸が細かい。せっかく芸を成したアクションがカット割の多さとカメラのブレにより、視認しづらくて見栄えがパワーダウン。演出と編集がミスマッチを起こしている。おそらく、本作のアクションを十二分に楽しむには、『NARUTO』のうちは一族のように写輪眼を開眼させて目で追いかける力を身につけるしかないだろう(笑)

悪い点としては、マ・ドンソク演じる主人公が何者なのか全く説明がない点が挙げられる。本作のマ・ドンソクはアクションもコメディも平常運転である。それゆえ、本作を鑑賞する方が、マ・ドンソクがどのようなアクションを繰り出すのか&どのようなコメディ披露するのかを知ってる前提になっている。つまり、マ・ドンソクを知らない者にとって本作の主人公は「説明なくて、よく分からんけど、なんか強い人」にしか見えない。あまりにも配慮が不足。結局、『コンクリート・ユートピア』と同じ世界の作品なのに、「いつものマ・ドンソク映画」になっている。せめて、ソウル崩壊前に強さを明確に提示できる背景が必要だったと思われる。実は『エターナルズ』の一員だったとか、警察で強行犯係に所属していたとか(笑)

『コンクリート・ユートピア』を鑑賞した者にとって、本作で登場するアパートやアパートに関する噂話にはニヤニヤを隠せない(笑)


⭐評価
脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐
演出・映像   :⭐⭐⭐⭐
登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐
設定・世界観  :⭐⭐⭐
星の総数    :計15個
プライ

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