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エスのyoshyのネタバレレビュー・内容・結末

エス(2023年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

感じたままに感想を。
まず本作品の「テーマ」が何なのか、を感じ考えることから始めたい。

友達とだべりながら一晩会話しているかの如き、日常と同じような会話の内容、間、言葉の量。一言で言うなら、まさにリアルである。
リアルであるが故に、この作品で語りたいであろう内容は、まさに日常で我々が直面し誰もが悩んだり違和感を感じたことがあるであろう何か(それは人間関係や感情といった「人間とは何なのか」につながるものなのだが)にまつわることなのだ、と感じることができる。

「人間とは」と一言で括ってしまえばテーマとしては普遍的とも言えるが、設定として「身近な人が犯罪を犯したら」しかも、例えば殺人とか、言い方は悪いかもしれないが「その後の反省・再生という人生設計がわかりやすい」ものでなく、ある意味「微妙な」犯罪。提示の方法としてはオリジナリティがあるように感じる。
「少しだけ取り返しのつかない失敗」をすることって、人生でたまにあると思う。身の回りの人間が離れて行ったり、離れず助けてくれる人がいたり。
そんな時、そこにどれだけの数の、どれだけの色の「感情」があるのか。十人十色、その人からしたらその人なりの感情があり、解釈がある。「正しい」は存在するのか。しないのか。
しかも当事者(染田)の真の苦悩は語られていない。まさにこの世の中ではないか。当事者のことをよく知る身近な範囲ですら、当事者の預かり知らぬところでめいめい色々なことを考え、「勝手に」感情を膨らましていく。

身近で、リアリティのある、答えなきものへの問いかけのようなテーマ。しかしながら鑑賞しているこちら側に多くのものを問いかけ、考えさせる。面白い内容だと思う。

その上で、その描写方法。登場人物の人数やその場面の空間の大きさ、台詞で場面を展開していく、など「舞台」的な要素に、近接した演者の表情や、見せたいもののアップ、その場面の情景などの「映像的」描写。
これが太田監督の「現在地」なのだろう。そう思って楽しめた。
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