太田監督自らの経験を題材にした作品。
ある事象によって自分と他者との関係性が変容し、再構築していく過程が、リアリティある描写とキャストの迫真の演技で語られる。内容はシリアスだが、カラッとした音楽とよく合っていた。
また、本作に通底するザラついたリアリティは、社会生活において他者との関係性を割り切ることが極めて難しいことを浮かび上がらせる。
そのあたりは、小説家の平野啓一郎氏の作品『ある男』などを通して語られている分人思想にも通じるように思う。
映像技術などプロフェッショナルな視点を私は持ち合わせていないが、作品に引き込まれ、2時間あっという間であった。喝采を送りたい。
次に来る作品がどのようなものなのか、大変楽しみにしている。