半兵衛

緋牡丹博徒 お竜参上の半兵衛のレビュー・感想・評価

緋牡丹博徒 お竜参上(1970年製作の映画)
3.6
幼少時代から父が実録やくざ映画ファンでその影響を受けた私も少年時代から『仁義なき戦い』やその他実録やくざ作品を見まくったため、高倉健や鶴田浩二、藤純子が活躍した任侠映画が嘘臭く感じてしまいどことなく距離感が生じてしまった。今でも「死んでもらいます」の健さんより、「われ、往生せえや!」の文太のほうがしっくりと来てしまう。

そんな私でも『緋牡丹博徒 お竜参上』による任侠を加藤泰監督ならではのローアングルや緊張感が虚構の美学へと昇華されていく素晴らしさには一目置いてしまう、嘘臭さもあそこまで極めれば立派な映像世界になってしまえるのだなきっと。でも加藤泰監督はこうした東映やくざ映画で自分の演出術を極めてしまったために、70年代以降は自分の作風と映画界の変貌とのギャップを埋めることが難しくなり開き直ったかのように暴走していったように感じられる。

そして凌雲閣を背景にした今戸橋のセットによる虚構の美しさのインパクト、美術を担当した井川徳道氏の技が光る仕事ぶりでこうした職人が支えていたからこそ監督も思う存分演出に力を入れられたのだろう。

沢淑子は相変わらず美味しい役で登場するが、それよりも個人的には重要な場面で蜜柑を食べながら話を聞いている三原葉子の名演の方が好み。
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