よん

毒娘のよんのレビュー・感想・評価

毒娘(2024年製作の映画)
3.6
「これはホラーではなく百合系ホームドラマ」

ある一軒家に越してきた家族を謎の脅威が襲う。真っ赤なコートにジャージ姿、ざっくばらんな黒髪に手にはハサミを携えた一人の少女"ちーちゃん"。彼女はこの家の元住人であり、新たな居住者を狙い執拗な嫌がらせを続けるというが…

ビジュアルからしてかなりサイコホラー味を感じるかと思うが、その実蓋を開けてみれば抑圧された女性たちの解放がテーマとなっており、ちーちゃんの存在はただのキッカケに過ぎないことがわかる。

無自覚のモラハラで家族を支配する父親。遠慮がちで言いたいことが言えず、自分を押し殺す後妻。そして実の母親を亡くし、心を閉ざす娘。

この家族構成だけ見ても、誰がどうなるのかはなんとなくでも感じ取れるはず。

ちーちゃんという謎の脅威を前に家族が一致団結して立ち向かう!ということはなく、むしろ対応が各々で違うため、上手くコミュニケーションも取れないまま状況は悪化してゆく。

特に娘の萌花はちーちゃんにシンパシーを感じ、彼女を受け入れ始めてからはある種の百合的な友情を育むようにすらなる始末。

ちーちゃんとの刹那的で危なっかしい友情は10代中頃にあったノスタルジックさを感じさせ、本編の見所ではあるかもしれない。

結局のところちーちゃんという存在についてはボヤかされたままなので、おそらくシリーズ化させるつもりはないだろうが少しモヤモヤするかも。

キャラクターとしてはポテンシャルを感じさせるものの、彼女がなぜそこまであの家に執着するのか。なぜ誰も捕まえることができないのか。

細かいことは気にせず「なんとなく」な薄気味悪さを味わえれたら、それで良いくらいの映画。

ホラー的なものは多少の演出のみなので、ビックリ系が苦手な人も安心して見れる。
よん

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