Uえい

ゴースト・トロピックのUえいのレビュー・感想・評価

ゴースト・トロピック(2019年製作の映画)
3.6
何でかわからないけど注目されているバス・ドゥヴォス監督の作品を見に行った。これが、ちょっと眠くなるけど面白かった。

ベルギーのブリュッセル(アケルマンの
「ジャンヌ・ディエルマン〜」を思い出す)が舞台だ。主人公はビルの清掃員の女性で、仕事はビルの営業が終わる夜中に始まる。仕事を終え、電車で帰路に着くが、終点まで寝過ごしてしまう。もう終電も過ぎてしまい、真夜中の街を歩いて家に向かうのだった。

そこからオデュッセイア的な帰宅の物語が始まる。カメラは彼女を追いながら、ホームセンターの警備員や、パン屋の店員に助けられたり、はたまた浮浪者を助けたりと、社会のB面とも言える人たちと交流する。この様子は同じくベルギーのダルデンヌ兄弟と似た眼差しを感じた。主人公含め、移民と思われる人々が多く登場するのもそう感じさせる要因だったか。

そして、終盤、夜遊びをする娘を目撃するシーンがあるが、母性溢れる眼差しが印象的だった。マリア的な優しさに満ちていて、見ているこちらも幸せな気持ちになる。ラストシーンも素晴らしく、南国で娘と友達が遊んでいる。どう見るのかが難しいが、彼女が序盤に見た広告に似ており、娘が幸せに生きることへの祈りの様な優しさに包まれた。

また、見逃せないのが、オデュッセウスを導くアテナかの様に現れる動物達、インコと犬。特に犬が、オレンジ色の優しい光に包まれ、柱に繋がれた紐から解放されるシーンが良かった。それを察する彼女はもはや人としてでは無く、超常的存在として描かれている様に感じた。
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